きみ、ムーミンが毛むくじゃらなのははっきり違うような気がするからまだいい。ミイと呼ばれる小うるさい三つ目のちびはあんなに食卓や残飯の周りを飛び回っていただろうか。それにスノークと呼ばれる伊達男気取りのトロールはテンガロンハットをかぶって澄まし顔をしているが、彼は本来シルクハットをかぶってはいなかったか?きみのご両親は仲むつまじかったはずだが、どうやら今は離婚してお父さんは山へ芝刈りに、お母さんは川へ洗濯に行っているらしい。でもまあそうした些細なことは置いておいてもいい。福祉国家は寛大だから、その辺境にはよくありがちなこととも言っていい。決定的にぼくの記憶と違っているのは--
きみたちの大半は癌か脳卒中か心筋梗塞で死ぬ、とスナフキンは頭を抱えました。そうですよ、とスノークが答えました。
きみを呼んだつもりはないよ、とスナフキン。私のせいにしないでください、とスノーク。あなたはそんなことをムーミンに答えさせるつもりだったんですか?そんなの100億万円積んでも豚に真珠です。それならきみには答えられるのかい?もう答えたじゃないですか。
私たちの大半は癌か脳卒中か心筋梗塞で死にます、とスノークは駄目押しで答えました。なかなか悪くないでしょう?中には免疫不全症候群や、恋に焦がれて死ぬ者もいないでもありません。しかしこれは感染症や事故死でずっと若い平均寿命で命を落としていた時代よりも文明が進んだ成果と言って良く、私たちだって文明の恩恵に預かって悪くはないでしょう?
そのテンガロンハットもかい、とスナフキン。このテンガロンハットもです、とスノーク。そのテンガロンハットもよ、とフローレン。そのテンガロンハットもさ、とムーミンパパ。そのテンガロンハットもね、とムーミンママ。そのテンガロンハットもかい、とヘムレンさん。そのテンガロンハットもねえ、とジャコウネズミ博士。そのテンガロンハットもか、とヘムル署長。そのテンガロンハットもですかい、とスティンキー。そのテンガロンハットもなの、とフィリフヨンカおばさん。そのテンガロンハットもなのよ、とミムラねえさん。そのテンガロンハットもなの?と偽ムーミン。いやはやみなさん、照れますなあとスノーク。