人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(15)

 知られて困る秘密を握られるのは、親友であっても嫌なものです。もっとも些細な内緒ごとを知られて困るほどの相手まで親友と呼ぶのは無理があるとも言えますが、親しき仲にも礼儀あり、という言葉もありますからいちがいに何をもって親友か否かを線引きするわけにはいかず、人類みな兄弟と大きく括るならうさぎにも同じことが言えるでしょう。
 ただしうさぎのような攻防ともに心もとない小動物は、警戒心はとびきり強いのが普通です。こればかりは親友であろうと肉親であろうと隔てなく、四六時中寝首を掻かれないよう神経を張りつめさせていなければなりません。まして女友だちともなれば、親しいほどに距離感は微妙にならざるを得ません。
 ミッフィーちゃんとニナ、もといメラニーの関係はそういう種類のものでもあるば、さらにこじれたものでもありました。ミッフィープライヴェートではナインチェと呼ばれないと怒るのですが、実際はそうしてみせることで本名がナインチェプラウスであると確認させているだけで、源氏名、もといニックネームの方がはるかに世間には通りが良いのをアピールしているのが本心なのです。アギーことアーヒェもウインことウィレマインもバーバラことバルバラも、ナインチェミッフィーでいるなら自分たちがアギーであり、ウインであり、バーバラであることに特に頓着はありませんでした。女の子の大半は本名よりもニックネームで呼ばれますし、結婚すれば名字だって変わります。家柄が良ければ何某家令嬢、何某家夫人と個人名すら問題になりません。
 ですがペンフレンドから始まったミッフィーちゃんとメラニーの仲は、基本的にはいつまでもナインチェとニナのままでした。それよりもニナはメラニーと呼ばないと感じが出ないほどメラニーになっていましたが、ナインチェは不安定にミッフィーとナインチェ、ともすればうさこちゃんという呼び名の間を移ろっていたのです。お父さんのファデル・プラウスさんやお母さんのムデル・プラウスさんは、ついついナインチェをうさこと呼んでしまうことがありました。妹のクライネ・プラウスが生まれると、ミッフィーちゃんはうさこと呼ばれても大胆に無視する口実ができました。どっちのうさこを呼んでいるのよ、というわけです。第二子ができると難しいのはうさぎの世界も同じですが、その上ミッフィーの場合は事実上、一家の大黒柱でもある、という事情もありました。