秘密の臭いがプンプンするところにはカネの臭いもプンプンするのが世のことわりというものです。ミッフィーのディヴィジョンはハローキティより20年あまり先立って設備されたものですから、年季の分だけ棒給も高いとも、基本給自体は新旧に隔てはなく勤続年数手当がついている程度ではないかとも思われました。ここでは公共施設として売り上げよりは利用者数が目安になっていると考えられますが、二軒目であるキティのディヴィジョンが設立された時点ですでにその需要は認められているのですから、客足が偏りを見せたところでミミィたちはそれほど心配することはないはずなのです。ついこの間まではハローキティの店だけでミッフィーの店の常連客までもさばいていて、それでもミッフィーの店は施設として営業を続けていたではありませんか。
流行りすたりとはどこの世界にもあって、そのほとんどは根拠も原因も法則性もないものです。今自分たちが流行りに見離されているにしても、明日のことはわかりません。ミミィやデイジー、キャシーたちはそう思うことにしました。しかし師団長室に引きこもって陰々滅々に運命を呪っているハローキティについては、どうしてやることもできません。お店が急に不景気になったのは何もハローキティに責任がある、と糾弾する気はデイジーたちにはほとんどありませんでした。ほとんど、というのは消えたリボンの件以来キティがすぐさま職場放棄して閉じこもっているからで、マダムみずからがそんな具合では職場の志気も下がる一方です。せめて今はスパイに差し向けたマイメロディからの情報を待ち、なぜ自分たちの常連客はおろか一見さんたちまでもミッフィーの店ばかりに取られてしまうのか、対策を練るくらいしか突破口はなさそうでした。
一方、スパイとも知らずにマイメロディをアルバイトに雇ったミッフィーのお店は、天然ボケのかたまりのようなマイメロを新たな看板娘にいよいよ大盛況でした。あんた何でこんな忙しい店に来る気になったの、とメラニーが尋ねると、マイメロは悪びれもせず、キティちゃんのお店の人にどうしてこっちのお店が大繁盛しているか、アルバイトに化けて調べて来い、って頼まれたの、と悪びれもしません。そう、とメラニー、それで何かわかった?ううん、全然。キティのお店の人に言わないなら教えてあげようか、とメラニーが言うと、うん絶対言わない、とマイメロは答えました。