人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

娘たち(2)

次女の出産はすぐに迫った。「破水したわ」と妻は言った。長女は熟睡中。「私ひとりで行ける、タクシーで。あかねをお願い」
妻を送り出して2時間後に産婦人科から電話「素晴らしい安産でしたよ。奥様もお嬢様もお元気です」
妻は長女の時も破水から3時間、出産はまったく無痛という完璧な女体。しかも避妊しないと受胎する(長女の受胎日も次女の受胎日も特定できる)そういうすごい女性だったが、さすがにこれには驚嘆した。
朝に長女を保育園に送ってから産婦人科に行った。この産婦人科では1週間は新生児は保育室なので窓越しに次女を見た。
妻は一晩で6人部屋のアイドルになっていた。もともとちっちゃくてあどけなく可愛らしいから女性には好かれるのだ。「あっ、ひとりでタクシーできた人のご主人がきたわ(笑)」…妻は産婦人科中で「ひとりでタクシーできた」ことで話題になっていたのだ。
退院までの1週間、朝は長女を保育園、夕方は長女とお弁当を持って妻と夕食。長女は毎日帰りには号泣していたが、最期の2日には泣かなくなって、自分からママに「もう帰るね」と言うようになっていた。妻にとってはそれも寂しかったようだが…。おそらくその前日に、帰りの二人乗り自転車でどしゃ降りだったのが長女の覚悟を変えたのだと思う。
保育室の次女は、窓越しに見ても紛れもなくぼくと妻の娘だった。生後すぐの長女のファクシミリみたいだった。長女はほとんど実感がないようだった。保育園の掲示板には「あかねちゃんにいもうとがうまれました!」と貼られたのに。
長女は里帰り出産だったが次女は近くの産婦人科、タクシーで5分。1週間で戻った。姉は妹を可愛がりもすれば邪魔にもした。あやねはまったく手がかからない子で、むずかることも授乳・ミルクに抵抗することもなく、毎晩ぼくが横抱きで両足を手で包んで寝かしつけた。
「ひとり目はすごく嬉しかったけど」とぼくは妻に言った、「二人目は本当に可愛いね」
「本当に可愛いわ」と産休中の妻は「風来のシレン」をしながらジョコンダ(モナリザ)の微笑で答えた