人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

世界の10大映画(淀川長治選)

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淀川長治(1909-1998)は神戸出身の映画評論家・解説者。「日曜ロードショー」では今も故人の映像がジングルに使われるくらい愛された映画人であり、戦前からのプロモーターとしての業績、雑誌「映画の友」編集長としても、日本の外国映画受容史は故人とともにあったといってよい。
そういう偉大な人の世界映画ベスト10、出典は「映画となると話はどこからでも始まる」(勁文社1985)の巻末エッセイで、同書は蓮実重彦山田宏一の両氏との座談会に三人三様の「映画ベスト10」エッセイを併せたもの。もちろん対象映画は1985年までだが、内容が古びていないのには感心する。なにしろ淀川氏が6歳の時に見たという「カビリア」(伊'14)から始まっているのだ。氏の発言を受けて「イタリア・サイレント映画特集」がイタリア文化会館で催されたのも懐かしい(日本では70年ぶりの「カビリア」は床までびっしりの満床状態だった)。
さて、淀川氏はエッセイで100本挙げているのだが、冒頭に挙げられた決定的なベスト10をご紹介する。

●黄金狂時代(米'24/チャールズ・チャップリン)
●グリード(米'23/エリッヒ・フォン・シュトロハイム)
駅馬車(米'39/ジョン・フォード)
●ベニスに死す(伊'71/ルキノ・ヴィスコンティ)
●「アマルコルド」(伊'74/フェデリコ・フェリーニ)
●81/2(伊'63/フェデリコ・フェリーニ)
●野いちご(スウェーデン'57/イングマル・ベルイマン)
●疑惑の影(米'43/アルフレッド・ヒッチコック)
ミモザ館(仏'35/ジョセフ・フェーデ)
天井桟敷の人々(仏'44/マルセル・カルネ)

この調子でさらに90本続く。楽しいったらない。
ラインナップはやや古色蒼然たるものだが、この場合は古式ゆかしいと言うべきで、前回ご紹介のドナルド・リチー氏のベスト10とはまるで異なる「映画ファンの目」が感じられる(リチー選ももちろん必見の傑作ばかりだが、学問的研究対象としての選出なのは否めない)。
淀川選ベスト10を国別で見ると、アメリカ4本(だが淀川氏はヒッチコックをイギリス映画に考える)、イタリア3本(しかもフェリーニ2本)、スカンジナビアから1本、フランス2本。戦前~戦中6本、戦後4本。この本のカバーももちろん「チャップリンの「黄金狂時代」だ。