人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

世界の10大映画(山田宏一選)

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今回も淀川長治蓮実重彦山田宏一共著「映画となると話はどこからでも始まる」1985の世界映画ベスト10の話題。故・淀川氏のベスト10は前回紹介した。
山田宏一氏(1938-)は日本の映画批評界でもっとも尊敬されているひとり。60年代をパリ留学で過ごし、「カイエ・デュ・シネマ」派の映画批評家映画作家と親しく交わり、現地でヌーヴェル・バーグの空気をたっぷり吸って映画批評家との活動を開始した。クリント・イーストウッド映画作家としての才能をいち早く評価したのも、アメリカ映画のフィルム・ノワール(暗黒映画)の系譜をファム・ファタール(宿命の女)映画とともにまとめあげたのも氏の功績に挙げられる。主著を1冊といえば、60年代パリの映画留学の回想録「友よ映画よ」だろう。特にヌーヴェル・バーグに興味がある人は必読、そうでない人でも映画に関するもっとも美しい本として一読の価値がある。
では山田宏一選・世界映画ベスト10を見てみよう。「順不同で-」とただし書きがある。

キートンのカメラマン(米'28/バスター・キートン)
●ピクニック(仏'36/ジャン・ルノワール)
●ハタリ!(米'62/ハワード・ホークス)
●黄金時代(仏'30/ルイス・ブニュエル)
気狂いピエロ(仏'65/ジャン=リュック・ゴダール)
●鳥(米'63/アルフレッド・ヒッチコック)
●上海から来た女(米'46/オーソン・ウェルズ)
●「フェリーニの道化師」(伊'70/フェデリコ・フェリーニ)
●静かなる男(米'52/ジョン・フォード)
●街の灯(米'31/チャールズ・チャップリン)

山田氏がもっとも私淑したフランソワ・トリュフォーが選出されていないが、それはかえって慎ましいと見るべきで(ベスト150にはもちろん選出)、このベスト10そのものがトリュフォーの薫陶を受けた日本人弟子としてふさわしいものになっている。つまりトリュフォーが選んだ世界映画ベスト10と言っても通るような選出になっている。
年代的にも作風的にも実にまんべんなく気くばりがきき、それに重要なことだが、どれも文句なく面白い。万人受けもすれば(「黄金時代」「フェリーニの道化師」除く)マニアの観賞にも耐え得る。
ああ映画っていいなあ、としみじみするラインナップだと思う。また「気狂いピエロ」が見たくなってきた。