人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(11)ヘルダーリン

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ジャーマン・ロック第11回目はドイツには珍しい抒情派プログレッシヴ・ロック(シンフォニック・ロックとも呼ばれる)バンド、ヘルダーリン(Holderlin,1972/Hoelderlin,1975-)。この名はロマン派の詩人から借りたものだが、同様のシンフォニック(クラシカル)・ロック系バンドにヴァレンシュテインやノヴァリスというのもいて、ノヴァリスヘルダーリンと並び賞されるロマン派詩人、ヴァレンシュテインは元祖ロマン派ゲーテと並び賞される詩人シラーの晩年の大作戯曲の主人公の名前だ。日本で言えばバンド「おくのほそ道」「与謝蕪村」「おらが春」と名乗るセンスと言ってよい(違う?)

この3バンドともいまいち小粒なのだが、結成40年で現役の根性と、決定的な傑作が1枚あることでヘルダーリンは単独、ヴァレンシュテインとノヴァリスは次回に抱き合わせで紹介する。実はドイツ国内限定で人気のあったシンフォ系バンドはジェーン、ネクター、バース・コントロール、グローブシュニットなどまだある。だがいかんせん英米ロックのコピーを脱せずオリジナリティに乏しく、推薦するに忍びない。ただし単体で聴くなら悪くない。決してB級ではない。

やっとヘルダーリンだが、第一作「詩人ヘルダーリンの夢」1972(画像1)は1970年末録音、オランダ人女性ヴォーカルにフルート、チェロ、メロトロンのアンサンブルが絡む、ほのかにサイケな、ドイツ・リート的クラシカル・ロックの名作だった。ポポル・ヴーやワパスー(フランス)の名作に匹敵するものだ。歌詞がドイツ語なのもジャーマン・ロックでは珍しい。
だがこの女性はヒッピーだったらしくアルバム発表の頃にはバンドは活動停止。綴りを英語風に変え、再デビュー作「ヘルダーリン」1975(画像2)はイギリスのキング・クリムゾン「太陽と戦慄」1973の影響の強い作品となる。ヴィオラ、フルート(サックス兼任)という編成からイギリスのキャラヴァンに共通するアレンジも見られる。ヴォーカルは残った男性メンバー。曲名、歌詞も英語。続く「道化師と雲」1976、「レア・バード」1977も同路線。ジェネシスの影響も強い。
集大成ライヴ「夢の国」1978(画像3)を最後にバンドはポップスに転向。だが2007年に26年ぶりの新作「8」でシンフォニック・ロック路線に戻った。めでたし。