人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Strange Days(まぼろしの世界)

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○断片とコメントなど

(1)はじめまして。ぼくも本から学習したり、入院した時には詳細な観察ノートをつけていました。精神入院は4回、病院は3か所、入院期間は10か月に及びます。ひとつ屋根の下でおよそ200人の患者仲間と暮らしたことになります。ただ、ぼくの見てきた患者の実態と医療現場の現実は本にはうやむやにされているのを感じます。
統合失調症が慢性化すると半永久的入院しかないのか、なぜ躁鬱病は3か月ほどの短期入院で退院できるのか、結果的に精神病棟は9割が長期入院の統合失調症で占められるのか、どの本にも明確に書かれていません。現状から客観的に書くこともできるでしょうに。むしろ社会福祉関係の文献で「社会的入院」という言葉を知りました。単身者の場合病気が治ってもアパート契約や仕事を失い、引き取り手の親族もいないので生活保護入院を続けながらいつまでも退院できない。確かにこのケースに該当する入院患者(主に高齢で寡夫の男性、または軽犯罪で捕まったホームレス)も見かけました。
そうしたことも含めて精神医学の概説書(新書判で隠れたベストセラーがいくつもあります)に書かれないのは読者の心配をやわらげるためでしょうが、ぼく自身が精神障害者ですから残酷な真実でも知りたいのです。例えば統合失調症躁鬱病境界例について。

(2)救急車には4回乗った。40代半ばにして初救急車かと嘆かわしく、しかも入院自体が初めてだったから、ぼくのようなやせっぽちの優男の初救急車・初入院がよりによって精神疾患か、と記念撮影でもしてほしいくらいだった。
あ、そうか。有名人になればいいのか。筒井康隆の小説は的確に時代を予見しすぎていて「虚人たち」以降片っ端から古びていったが、監視妄想の現実化が「おれに関する噂」なら、自分ではどうにもならない病人の願望はどっちに転んでも他人任せのマゾヒスティックなものになる。撮影されたがるのもマゾヒストの典型的反応だ。

(3)しかし本当に危険なのは躁病相で、幻覚から妄想が生じると突拍子もない奇行を演じる。ぼくは幻覚に呼ばれて着衣のまま入浴した。下水道を通ればどこにでも行けるぞ、と次の妄想が生じ、栓を抜いて頭から潜ろうとしたが失敗した。ぼくは恋人に会いに行こうとしたのだ。彼女は人妻だった。-その晩ぼくは寝タバコで焼死しかけ、翌日緊急入院した。