人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

起たない話

今日は伊勢原のクワバラくん(初入院した時友人になり、今でも時々会う)から電話がかかってきた。

「佐伯さんどうしてます?おれはヒマでヒマで」
「作業所は行ってるの?」
「週一くらいかな」
彼は去年の秋に障害者手帳の更新があり、突然等級が一等に上がってしまったのだ。通常なら街を歩いている一級というのはいない。自宅なり入院なりで介護を要する等級なのだ。
「幻聴あるからかな。自分の声が話しかけてくるのが聞こえるんですよね」
「それはやばいなあ。おれが入院した時、聞こえる声の命令で暴れだす人がいたぞ。どんな内容なの?」
「自分の声だとしかわかんないですね」
「危険なことにならなければいいね」

「あ、それから病名が変った。よくわかんないけど」
「どんな病名?」
「これまで統合失調症だったけど、統合失調感情障害だって」
「ああ、割と最近にできた病名みたいよ。クワバラくんもけっこう躁鬱の波があるよね?」
「うん。ある」
統合失調症躁鬱病の症状が加わったもので、治療法は統合失調症と同じらしいよ。おれは躁鬱病統合失調症の症状が重なる時があるから、クワバラくんと逆だな」

クワバラくんは等級に応じて生活保護受給額も上がった。ぼくもクワバラくんも質素だし遊びはパチンコすらしない。クワバラくんは趣味すらないが、倦怠感が大きいらしく、自炊生活といっても炊飯くらいしかできないので生活費はほとんどスーパーのお惣菜で使い切ってしまう。
「でも少し増えたならピンサロくらい行けるんじゃない?」
「行って来ましたよ」と暗い声でクワバラくん。「起たなくなっちゃった。家でエロビデオ見ても駄目」
「直接刺激でも?肛門に指入れてもらうとか」
「頼めませんよ」
「大抵のお店なら頼めばしてくれるぞ。内視鏡検診受けたことない?」
「ない」
前立腺刺激されると嫌でも漏らすぞ」
「いや、もうちんぽがダメになってます」
「早すぎるよ。別れた奥さんでも駄目かい?」
「…そしたらがんばる」
「だったらいいじゃない。おれなんか別れたかみさんとだけは絶対駄目だ」

と、クワバラくんとはいつもこんな調子だ。インポは話半分だと思うが、そういう気分なのだろう。「治るといいね」と言うのも変だしなあ。