人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

詳評アガサ・クリスティー・ベスト10

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前回集計した3種のベスト10から(Pはポアロ作品、Mはミス・マープル作品、Nはノン・シリーズ作品。順位はファンクラブ選に準拠)今回はさらに検討してみたい。アガサ・クリスティーの長編66作・短編集20冊からこの18冊が選ばれたのはなぜか?

〈満票〉
そして誰もいなくなった(1939N)/アクロイド殺し(1926P)/予告殺人(1950M)/ゼロ時間へ(1944N)
-これは二大名探偵の代表作を一作ずつと、ノン・シリーズからサスペンス小説と本格物の実験的作品という具合にバランスがとれている。「予告殺人」はオーソドックスだが、後の三作は問題作で、しかも大成功をおさめたものだ。トータルでも「そして誰も」がどのリストでも筆頭に上げられている。「アクロイド」はクリスティーの大出世作となった作品。

〈自選・ファン選〉
オリエント急行の殺人(1934P)/火曜クラブ(1932M)
-前者は二度と使えない意外な犯人の設定と映画化の大成功でクリスティーの華麗な一面を示す。後者はミス・マープル初登場の連作短編集で統一感があり(ミス・マープルは、いわゆる「安楽椅子探偵」としてデビューした)、リスト中唯一の短編集でもある。

〈作者単票〉
終りなき夜に生れつく(1967N)/ねじれた家(1949N)/無実はさいなむ(1958N)/動く指(1943M)
-失敗した実験作だけに愛着ひとしおなのだろう。筆者にも不評ほど悪くないと思える。文学性を狙った意図が新鮮に思える。

〈乱歩単票〉
白昼の悪魔(1941P)/三幕の殺人(1935P)/愛国殺人(1940P)/シタフォードの秘密(1931N)
-乱歩の好みはブラック・ユーモア(「三幕」)と悪への関心(「愛国」)、そしてゲーム性だった。おそらくゲーム性の頂点「ひらいたトランプ」1936は未読だったのだろう。

〈ファンクラブ単票〉
ABC殺人事件(1935P)/ナイルに死す(1937P)/葬儀を終えて(1953P)/スタイルズ荘の怪事件(1920P)
-「ナイル」は映画人気と日本の某有名作との類似、「ABC」「スタイルズ荘」は普及度(各社文庫に収録)からだろう。出来もいい。「スタイルズ荘」は処女作でもある。渋い「葬儀」の人気はファンクラブならではだろう。