人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記187

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(人名はすべて仮名です)
・4月15日(木)雨のち曇り
(前回から続く)
「勝浦くんは柳瀬さんがいた頃は渥美さんと柳瀬さんを昼間っからごろごろしやがって、と陰口を叩いていたが、次第に渥美さんが他人と談笑しようにも言語障害でしゃべれないから部屋にこもっているしかないのを理解し、それを言えば柳瀬さんも胃を切除していて流動食しか食べられないので静養しているしかなかったのだ。柳瀬さんの退院後には杭瀬さんが移ってきてやはり半身不随の身体障害者なので、勝浦くんもさすがに陰口を叩かなくなっていた。松本さん・清水くんと四人部屋にしてほしいと言ってもあと二週間ほどで彼らも退院してしまう」

「渥美さんは自分のおやつを買ってあるからいらないというので、勝浦くんと草大福・豆大福を一個ずつ食べ、残りの草大福と豆大福各三個を午後に杭瀬さんがデイケアから戻ったらおやつにしよう、ということになる。味見も兼ねて二種類の大福を二つに割って分けあう。頭も使っとらんのに甘い物はうまいな。だらけているようでストレスあるからかな。うむ、と勝浦くんが口をつぐむので、彼は自分からストレスを招き寄せている面もあるのだが、甘い物を食べて少しは解消できるならまだしもだ」

「昼食まではあっという間に過ぎ、昼食後の掃除も今日は環境整備であちこち消毒して手間がかかる。一服する間もなく午後のプログラムはグループ・ミーティング。今回も集団療法室グループに編入される。問題飲酒の典型例をテキストから選び、各自の場合はどうだったかを述べるのだが、今回もまったく経験していないので発言をパスする。隣の滝口さんから、また、と言われる。実際毎回、自分の経験にはない問題飲酒例ばかりなので仕方ない。ことごとく自分には該当しないのならば、自分はもしかしたらアルコール依存症ではないのではないか」

「入浴は一番風呂、晩に町田の断酒会があるので湯冷め覚悟だ。四時半に断酒会外出の六人に早めに夕食が運ばれてくる。五時半の職員バスで町田ターミナルに出る。断酒会は七時からなので時間の余裕はある。松本さんがダイソーでナップサック買いたいとのことで道なりに各自の用事が済むよう決めて、出発。ひさしぶりの町田の街並みの変化に目がくらむ。ダイソーがあるビルも20年前は無印良品レコファンのあったところだ」(続く)