人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記213

イメージ 1

(人名はすべて仮名です)
・5月9日(日)晴れ
(前回から続く)
「風呂騒動は昨日の話で、今日はさらにひと悶着あった。佐藤さんが日直の手順を訊きにきたので掲示板の前で説明した。佐藤さんは過去数回の入院歴があり、それはもう驚かなくなっていたし、入院するたび当番の手順が変っているというのもこの病院ならではだ。するといきなり吉村くんが寄ってきて、すいません、ぼくは日直できません!今の席も騒々しくてつらいので看護婦さんに変えてもらうつもりです、と一方的に言って去っていった」

「佐藤さんに説明を終えて喫煙室に行き勝浦くんに話す。一体あいつなんなんだよ!と勝浦くん。おれが訊きたいよ。しかも今日は夕方から晩にも次々と二人して困らされる。勝浦くんに言いたいことをわざわざ佐伯に事前相談してくる、というわけだ。夕方ロビーでメールを書いていると、外泊から帰ってきた金子が、勝浦くんは相田みつをは好きかな?はあ?勝浦くんは相田みつをは好きかな、とエレベーターに乗って上って行った。金子には三田さん(肥満)にストレッチ、滝口さん(主婦)に『食育』の手書きメモを頼みもしないのに渡した前科がある」

「部屋に戻り、本でも持ってきたのかなと話すと、冗談じゃねえ!と勝浦くん激怒。彼も金子に『肩こり解消法』の手書きメモを渡されたことがある上に、今も憎んでいる別れた二度目の奥さんが相田みつをのカレンダーを愛好していたのが勝浦くんの逆鱗に触れたらしい。看護婦に直訴する!佐伯くんも来てくれ。なんでおれも?証人がいるだろ?そこで二人でナースステーションに行き、勝浦くんの直訴に立ち会う。そういう干渉はきっぱり断って、と話はまとまった」

「夕方に金子の件があったので昨日ばかりか今日も吉村くんが苦情を佐伯経由で言いにきた、というのが勝浦くんには腹に据えかねたらしい。今夜も事情を理解してくれる当直さんで、吉村くんの症状は被害妄想がひどい、ほら今ナースステーションの前を通ったわよね、しょっちゅうあの調子で自分の話をされていると思っているのよ。一切知らないふりをした方がいい、席が替っても気にする様子も見せないで、とアドバイスされる。わかりました、と二人で一服しに行くと彼が看護婦と話しているのが見えた。予想もしなかったような、心底薄気味悪いことになったのはその後だ」(続く)