人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(31)

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第四章。
実は私も同じ疑問を持っていたのだ、とムーミンパパは言いました。それがいつからのことかは憶えていないが、他人と話題にしたこともある。だが確証をつかんだのは一度もないのだ、とムーミンパパは頭をかかえました。しかしこれではあまりに話が飛ぶので、もう少しこれまでの会話をさかのぼってみましょう。
・五分前
食事マナーの悪さを始め、日頃の礼儀作法までムーミンママと偽ムーミンに責められるに及んでは、ムーミンパパも開き直る手に出たのです。ふーん私はどうせ教養ないし、フィンランド政府のムーミン特別手当だけが収入の宿六さ。一応学校に通いはしたが、施設育ちだから義務教育からは逃げられなかっただけだ。
そういうものなの?
ムーミン、パパの言うことは昔の話よ、とムーミンママが即座につくろいます。今は勉強も遊びもどちらも大事なことなの。パパだってああ見えてそれほど馬鹿じゃないのよ。
馬鹿だと?どさくさ紛れとはいえ自分の亭主を馬鹿とはなんだ!
と、こうしてつらねていくとムーミンママの暴言もいかにも唐突なので、もう少し会話をさかのぼってみた方がいいでしょう。
・10分前
ところでムーミン、学校の成績がこの頃思わしくないそうじゃないか?とムーミンパパは嬉しそうに言いました。学校は楽しくないのかい?
そんなことを言われても偽ムーミンは悪戯を目的にしか学校になど行ったことがなく、表向きにはムーミンとして入れ替っているだけですから、自分は楽しんでいるといえ偽ムーミンには学校がムーミンにとって楽しいかはわかりません。偽ムーミンには、フローレンといいなずけ同士など虫酸が走るので極力冷淡な態度で接していましたが、冷淡にすればするほど馴れ馴れしくしてくるのがフローレンでした。しかも多少はムーミンのため、というよりムーミンらしさを装うために友好的な態度をとろうとすると、今度はフローレンの方が(偽)ムーミンなど眼中にない様子。若い女にはよくあることよ、と情婦には笑って済まされても、偽ムーミンムーミンになりすます唯一の不愉快はフローレンでした。
返事がないのでムーミンパパはムーミンママに話を向けました。われわれの小さい頃も学校の教師よりスナフキンが先生だったようなものだな。ということは、スナフキンはいつからこの谷にいるのか?本人ですら知らないのではないか?