人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アメリカ喜劇映画の起源(5)

イメージ 1

 コズミック出版は日本の版権切れ廉価DVDメーカーで書籍扱いで主に書店とネット通販で販売されていますが単品は五百円、ボックスセットは10枚組2000円という廉価盤映画ソフト会社です。画像掲載の『爆笑コメディ劇場』はチャップリンキートンが各三枚、ロイドとマルクス兄弟が各二枚という入門用にも贈答用にも保存用にも最適なセットです。なぜか収録順が不規則ですが、ここでは著名順にご紹介します。

 チャールズ・チャップリンは珍しい初期作品ですが、代表作となる1918年の『犬の生活』以降は著作権更新されているため、デビュー年のキーストン社時代から『夕立』『ノックアウト』『舞台裏』1914の三短編、エッサネイ社時代から『役者』『拳闘』『駈落』1915の三中編、ミューチュアル社時代から『放浪者』1916年の中編一編が収められています。フィルム状態は悪くありませんが字幕画面は新しく作り替えてあり、サイレントにはつきものですが原盤の再現性では物足りない。作品の選択はサンプルとすれば的確で、三年間で狡猾な小悪党から人情と哀愁の放浪者像を確立したのがわかります。

 ハロルド・ロイドはサイレント長編の『猛進ロイド』1924とトーキー後の『ロイドの牛乳屋』1936ですが、『猛進』は現行の正規メーカー商品より15分長い完全版、しかも着色版のマスターで画質、字幕翻訳も良質です。1924年作品でこれほど美しい映像マスターが発掘されたのは驚嘆に値します。内容はロイドの最高傑作のひとつで、その上画質最高とくれば文句なし。

 バスター・キートンは最高傑作『キートン将軍』1926が初上映時の105分!版で収録されています。これは25分も短縮した80分版の方が広く流通していたのです。佳作『キートンの大学生』1927と、これも傑作『キートンの蒸気船』1928のキートン三長編はフィルム状態は経年並み、しかし必見の作品揃いです。

 マルクス兄弟の『我輩はカモである』1933はパラマウント社最終作で同社での最高傑作、『オペラは踊る』1935はM.G.M.社移籍第一作で同社での最高傑作です。喜劇映画ベスト10にこの二作は必ず入ります。巻頭の映画会社タイトルがカットされていますが、画質、翻訳とも良質です。
 これらは30年前には特殊な上映会でしか観られなかった作品ばかりです。隔世の感があります。