横画像にすると小さくなってしまうので縦長に載せているが、実はこれはA4サイズのフライヤー(笑)を半分に折ってある。ちょうど紙面が上下で分かれており、下半分を載せると特定の団体名がわかってしまうからだ。これはその団体自体への疑問や不審ではなく、この文面から読み取れるメッセージのみを問題にしてみたい、というよりひまつぶしの楽しみにあれこれもてあそんでみたい。つまり真面目な意見を書こうという気は最初からない。だいたい「世界政府」なんて『ワンピース』まんまではないか。そして筆者は『ワンピース』を面白いと思ったことがない。
このチラシよりも『ワンピース』を面白いと思わない方がうかつに公言しては障りがあるかもしれないが、そこら辺はスルーして素直に文面に目を向けたい。
『世界政府』
「なぜ必要ですか
実現は可能ですか
ふさわしい支配者はだれですか」
これは見出しと問いかけの二問目までなら簡単に答えられる。『世界政府』どんな?「なぜ必要ですか」必要ないでしょ。「実現は可能ですか」無理だと思います。だが三問目で「ふさわしい支配者はだれですか」と来るからには、先の二問も実際はこう呼び掛けているのだとわかる。
つまり、これは問いかけなのはかたちだけで、世界政府の必要性と実現を前提として「支配者」像をアピールするのが目的なので、先のメッセージは実際にはこう書かれるのが修辞的には正しい。
『世界政府を支持しましょう』
「それが必要だからです
それを実現する方法もあります
ふさわしい支配者をお教えしましょう」
正直にそう書けばいいのに問いかけのかたちにするのは、謙譲の気持ではないだろう。これだって本当はまだ嘘が混じっている。本当のメッセージには主語がなければならないはずだ。
『私たちは世界政府実現を目指します』
「人類すべてにとって世界政府の統治は必要です
私たちの団体はその実現方法を提案します
私たちは世界政府支配者の選出を推進します」
これでだいぶこのビラの本音に近づいてきた。これと『世界政府』「なぜ必要ですか・実現は可能ですか・ふさわしい支配者はだれですか」という原文は同じ意味を述べている。主語と目的語を意図的に落した日本語には主体を極小にする効果もあるが、言葉を神の声にする詐術もある。相田みつをの詩などは典型的だ。