決めた、とミッフィーちゃんは唐突に言いました。こんなに不入りじゃ全員お店に出ていなくていいでしょ、交代であいつらのお店を偵察してこない?うさぎの思いつきですから彼女自身、深い考えがあっての提案ではありませんでしたが、この発案は全員を震撼させました。大胆なメラニーはフッと笑い、気弱なアギーはぶるぶると震え、のん気なバーバラは目をぱちくりし、クールなウインは無表情でした。ミッフィーちゃん本人はといえば、言いだした本人が真っ先に忘れてしまうのがうさぎの井戸端会議です。すでに考えは今日のお仕事は網タイツでも履いてみようかしら、それとも店のみんなでバニーガールの服でも着てみようかな、と衣装選びに思いをめぐらせていました。うさぎ(バーバラはくまですが)のバニーガール!でも向こうの店ではねこの店のくせにネコ耳をつけて接客しているとも聞いています。だったら自分たちのバニー姿もまんざら試さない価値はないとも言えません。
バニーガールもいいね、そのうちね、とメラニーが冷静に受け答えしたので、とっくにてんでばらばらのことを考えていた少女たちは、一瞬きつねにつままれました。どうして、とウイン。ナインチェの思いつきもいいけどね、とメラニー、一応私たちも軍務じゃない?こういうのは上に通しておかないと。それに勤務中に急場でもないのに持ち場を離れると、バレたら軍規違反なるかもよ。やるなら合法的かつ計画的にやらなきゃ。
それじゃ抜き打ち偵察にならないじゃない?とウインがミッフィーに代わって(口先はミッフィーは拙いのです)訊きました。私たちが事前に届け出していたら、業種も管轄も同じなんだからバレバレよ。
あの、とおずおずとアギーが言いました、自然ならいいのよね。そうねえ、とメラニー。なら非番の日に、バーバラにボリスと見に行ってもらうのはどうかしら。私たちで彼氏がいるのはバーバラだけだし。
あたし?とバーバラ。あんなねこ臭いお店、気乗りしないなあ。ボリスはうすのろだから、ボラれてもヘロヘロしているでしょうけど。行くのはいいわよ、でも時間給出してね。それで何を見てくればいいの?
商売繁盛の秘訣、それと重要なのは客層ね。このままじゃうちの店は先細りになる一方よ。うちの客が向こうに流れたのか、客層そのものが全然違うのか。マーケットリサーチしてきてほしいのよ。
……無駄じゃないかなあ、とバーバラは思いました。