野営地でキャンプ難民生活をしていたムーミン谷の一行は外食ばかりではお金がかかって仕方ないのに気づいていました。それは野原家が引率するふたば幼稚園ひまわり組でもジョースターさんたちスターダストクルセダーズでも、また林間学校中のパインクレスト小学生たちも同じでしたので、結論から言えば全員が集まって炊き出しをすればいいんじゃないか、というのが手っ取り早い解決策になります。幸い無許可で使用できそうな敷地・建物ともに校舎並みの広さの廃屋がこの休戦地ではあちこちにありました。彼らはたがいに異なる次元に存在している幻覚のようなものでしたから、誰も集団の全体を把握できている立場にはいませんでしたが、認識しあえる集団を組み合せていけば全員がとりあえず意志の疎通可能ではあり、それに彼らは「そこにはいない誰か」などという存在には慣れっこになっていたのです。10人集まったはずが11人いてもそれが現実なら受け入れないわけにはいきません。
ムーミンママ、野原みさえ、マーシー(パインクレスト小代表はもめたようですが)、ジョースターさんはとりあえず基本的な食材から検討を始めまました。ぼく、チェブラーシカはあいまいな国境を越えれば日帰りの町に家があるので、こうしたことには一切無関係でも良かったのですが、それはちゃんと商売に結びついた理由があったのです。
玉子、白砂糖、バター、小麦粉、牛乳、まずこれだけは必要だろうな、とジョースターさんが言いました。塩・胡椒といったところも当然だが。もちろん玉子、バター、小麦粉、牛乳とすでにアレルゲンまたは宗教上の忌避に抵触するものもすでに含まれているが、ヒンドゥー教でも牛乳とバターは教義上の菜食主義には触れないものとされている。食の制約に意味づけするのは一種のトレンドで、これら基本食材は人類4000年の歴史から自然に考案されたものだ。ただ問題は、とジョースターさんは首をひねりました、このあたりには飲み屋はあっても食品店はまるでないことだな。しかもわれわれはヴィザの制約でこのテリトリー以外に出入りすることができん。
あの、とぼく、チェブラーシカはおずおずと話に割り込みました。ぼくは元々隣町の住民で、旅行者じゃないから行き来も自由なんです。よければ隣町のお店から代理のお買い物をしてくることもできますよ。
こうしてぼくは割の良いピンハネ商売をまたひとつ、増やしたのです。