人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Spaghetti Fifty-2nd Street Birthday

 おかげさまで25歳になった。というのは大嘘で、ついに満年齢で52歳の馬齢に踏み込んでしまった。これで踏切事故などで一命を落とそうものなら新聞紙の地方欄には「52歳男性・踏切渡り切れず死亡」という具合に年齢で人格を代弁されるのにもいよいよ十分な歳になった。つまりは初老ということになる。本人にすれば25歳から52歳などあっという間だったように感じるが、この年齢差は現実には実際なら親子ほど離れていることになるのだ。わお。

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 ならなぜナポリタンスパゲッティなのか、とは問われるも返答に詰まるが、52(番街)といえばニューヨークで大西洋に面するだけあって移民のるつぼというイメージがある。「52番街橋の歌」はユダヤ系デュオのサイモン&ガーファンクルだし、アルバム・タイトルがずばり『ニューヨーク52番街』(原題には「ニューヨーク」はつかない)だったのはビリー・ジョエルグラミー賞年間最優秀アルバム作品だが、この人はイタリア系の人だった。だいたいアメリカの白人ミュージシャンと言ってもアーリア系白人はほとんど目立たず、ユダヤ系、イタリア系、アイルランド系、メキシコ系など少数民族に属する移民の子孫が多いので、要するにステーキにジャガイモを主食としているよりも年中スパゲッティを食べているような階層に当たるわけになる(と知りもしないがそのように想像する)。ほれ、何とか話はスパゲッティにつながったではないか。つなげたから何だというと、スパゲッティはうまいし貧しい食事ではないが、本来豊かな階層の常食に数えられるものではない、というそれだけのことなのだった。しかも独身男の自炊となれば手間と満足ではほぼ相殺されてしまう。もちろん食器だって洗わなければならないのは言うまでもない。

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 そんな具合で今朝起きたら52歳だったのだが、昨夜はあまりに暑いのでシャワー上がりは汗がまるで揮発しないのがわかり、扇風機は一昨日から出していたがぬるい空気をかき回すだけ、ないよりましという程度だろうか。トランクス一枚でしばらくいたが、しまいにはトランクスも脱いでしまった。50男の全裸でございます。それで布団に寝転がっても敷き布団との接触面積が広いほど暑苦しいから、体の側面で最小限に布団に触れるようにして寝転がる。プリンスの『ラヴセクシー』のジャケットのポーズ、と言えば知っている人にはすぐわかるだろう。これで少しは涼しいが、入眠するには不向きなポーズでもある。全裸で寝ているうちに歳をとるのか、と憮然としないでもないが、生まれてきた時は誰だって裸なのだからそう間違ってはいない気がする。茹でてあるスパゲッティ麺があるので(いつも2食分ずつ茹でている)、お湯でほぐしてサラダ油で炒め、ミートソースをかけていただく。51歳最後の食事がナポリタンスパゲッティなら、52歳最初の食事はミートソーススパゲッティになってしまった。こういう歳の取り方もあるとはさすがに25歳の時には想像したこともなかった気がする。