いつかご紹介しようと思って写真だけ撮ってあった。まるでおシャレなバーのような外装だが、確かに看板とノボリには焼鳥と謳ってある。つまりこれは焼き鳥バーということなのだった。一昨年閉店した画廊の跡にできたお店で、画廊の後が焼鳥屋というのも出来すぎて気の利いた話だが、嘘ではない。
先月撮った写真なのでまだ正月気分が抜けていない。この手書きボードもマメに更新しているようで、已然駅の反対側の西口にあった焼鳥屋こーちゃん(営業時間午後4時~午後9時・土日祝休・臨時休み週2~3日)とはえらい違いがある。こーちゃんは客席スペース約2畳、5名で満席、焼き鳥全品100円均一でモモ、皮、ネギマのタレ焼き・または塩焼きのみというシンプル・イズ・ベストみたいな店だった。
こーちゃんのじじい亡き今(と勝手に殺してしまったが、よぼよぼの老人だったし突然閉店したから当たらずとも遠からずだろう)そこも跡地はおシャレ系創作和食居酒屋になり果てたが、入れ替わるように駅の東口の画廊がおシャレ焼き鳥バーになったのは何かの因果を感じないではいられない。きっとこの私鉄沿線の各停停車駅には1駅1焼鳥屋の法則というものがあり、焼鳥屋が1軒閉まると次の焼鳥屋が生まれてくるのに違いない。そこには人智や経済事情を超えた焼鳥屋の宿命的輪廻があり、ちなみに今年はこの私鉄路線開通100周年に当たるのだった。次の改元の後もそのまた次も焼鳥屋の世代交代は関係なく続く。この世に焼き鳥に取って代わる酒の肴が生まれるまで続いていく。焼き鳥は和洋中の何なのかという疑問も超えてつけ入る隙もなく続く。個人の寿命さえ超えてと思うと虚無感すら感じる。改めてこーちゃんのじじいに合掌したいと思う今日この頃なのだった。なーんて言って焼鳥屋こーちゃんがあっさり復活したら、ひょっとして焼き鳥バー開業の影に尾を引いていたりしたら合掌も撤回するが、その際はまた報告したい。故人いわく、アイ・シャル・リターン。