人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

「黒ツグミを見る十三の方法」

再度ウォレス・スティーヴンズの詩を取りあげる。「黒ツグミを見る十三の方法」(1917)。やや長いので追い込み(/で改行を示す)にせざるを得ないのが残念だが、それでもこの詩は全訳しなければ意味がない。もともとは行分け詩なのを意識してお読みいただければ幸いです。

1
二十もの雪山のなかで、/ただひとつ動いているものは/黒ツグミの目だけだった。
2
私には三つの心がある、/三羽の黒ツグミがとまる/一本の木のように。
3
秋の風のなかを黒ツグミが舞う。/それはパントマイムの小さな一部だ。
4
ひとりの男とひとりの女は/ひとつのもの。/ひとりの男とひとりの女と一羽の黒ツグミは/ひとつのもの。
5
私はどちらが大切か知らない、/ 屈折による美か/暗示による美か、/飛んでいる黒ツグミか/飛び終えた後か。
6
野蛮なガラス張りの長窓を/つららが覆う。/黒ツグミの影が横切り、/行きつ戻りつする。/その影を正確に/たどることができるとは/思えない。
7
おおハデムの痩せた男たちよ、/なぜ黄金の鳥ばかり夢見るのか?/黒ツグミがおまえの女たちの/足もとを歩きまわっているのが/見えないのか?
8
私は高貴なアクセントと/明晰で厳格なリズムを知っている、だが/また私は知っている、/私が知る限り/黒ツグミとはいかに複雑であるかを。
9
ツグミが視界から飛翔した時、/それは多くの円のなかのひとつの/切片を描いた。
10
緑の灯りのなかに飛ぶ/黒ツグミの姿を見れば、/浮かれた娼婦たちですら/鋭い叫びをあげるだろう。
11
彼はコネチカットへ/ガラスの馬車を走らせた。/突然、恐怖が貫いた、/彼は自分の車の影を/黒ツグミと/見間違えたのだ。
12
川は流れている。/黒ツグミは飛んでいるにちがいない。
13
午後も更けた夜。/雪が降り/雪は降りつづけた。/黒ツグミはスギの木の枝に/とまっていた。