人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

#短歌

高村光太郎「母をおもふ」(昭和2年=1927年)

(岩手移住時代の高村光太郎) 母をおもふ 高村光太郎 夜中に目をさましてかじりついた あのむつとするふところの中のお乳。「阿父(おとう)さんと阿母(おかあ)さんとどつちが好き」と 夕暮の背中の上でよくきかれたあの路次口。鑿(のみ)で怪我をしたおれのうし…

俳句と短歌の『金輪際』

・金輪際わりこむ婆や迎鐘(川端茅舎) ・金輪際夜闇に根生う姿なり五重の塔は立てりけるかも(北原白秋) 以前にもこれを取り上げようと思い、まず『金輪際』の語源や、同様に本来の意味では使用されないが俗語表現としては生きている古語について前置きを何回…

短歌と俳句(23)岡井隆/春日井建

塚本邦雄(1920-2005)の第一歌集「水葬物語」(昭和26年8月)から始まった戦後の前衛短歌運動は優れた新人の登場を次々と促し、特に塚本が寵愛したのが寺山修司(1935-1983)と春日井建(1938-2004)だった。だが寺山は20代のうちに短歌から離れ、春日井は第一歌集…

戦前のモダニズム短歌

今回は戦前のモダニズム短歌を代表する前川佐美雄(1903-1990)と斎藤史(1909-2002)を紹介する。共に名家の子弟・子女で同人誌仲間だった。それぞれの処女歌集より抄出する。 春の夜のしずかに更けてわれのゆく道濡れてあればつつしみぞする かなしみはついに…

岡井隆の短歌

岡井隆(1928-)は塚本邦雄と共に戦後の前衛短歌をリードした歌人。特に初期の4歌集が名高い。代表歌を抄出する。 「齊唱」(昭和31年) 灰黄の枝をひろぐる林みゆ亡びんとする愛恋ひとつ あわあわと今湧いている感情をただ愛とのみ言い切るべしや 抱くときに髪…