そしてついにモブレーの名をジャズ史にとどめる不朽の三部作が録音される。その三作とは、
・「ソウル・ステーション」1960.2(画像1)
・「ロール・コール」1960.11(画像2)
・「ワークアウト」1961.3(画像3)
になり、共通メンバーはピアノのウィントン・ケリーとベースのポール・チェンバースで、彼らは61年3月からコルトレーンの後任で加入したマイルス・デイヴィス・クインテットでのバンドメイトでもあった。「ソウル・ステーション」と「ロール・コール」はアート・ブレイキー、「ワークアウト」はフィリー・ジョー・ジョーンズがドラムス。「ソウル・ステーション」はワンホーン、「ロール・コール」はフレディ・ハバード(トランペット)とのクインテット、「ワークアウト」はグラント・グリーン(ギター)とのクインテット。
こうして名前を上げていくと、ジャズマンて定年も寿命も短いんだな、と寂寥感も感じるが、これは他のジャンルでは例外的にしか起こらないだろう。私生活のトラブルなどではない。音楽によって、なのだ。
「ソウル・ステーション」はポップスやロックまで視野に入れても完璧なムード作品と言える数少ないアルバムで、ブルー・ノート作品ならアイク・ケベック(テナー)の「ブルー&センチメンタル」、ロックならラヴの「フォエヴァー・チェンジズ」、モット・ザ・フープル「革命(モット)」に匹敵するものだろう。スタンダード2曲に挟まれてオリジナル4曲が収録されているが、冒頭のスタンダード『リメンバー』のテナーの一声から戦慄が走る。これまでのモブレーとなんら変りはないのだが、どこかが決定的に違う。モブレーのような、いわば普通のジャズマンが達しないステージにいきなり到達してしまったのだ。しかもその自覚がない。
メンバーにもその自覚はない。いつものアルバム録音のつもりでモブレーの準備してきたレパートリーをリハーサルし、せーの、で録音したのが1960年2月7日。「すごいアルバム作っちゃったな」と本人たちは気づいたかわからないが、ブルー・ノートのスタッフは成果を認めたのだろう。ケリーとチェンバースで続く2作を作ったのがその証拠で、ただしトランペットやギターを入れたりしてヴァリエーションをつけた。
あまりに「ソウル・ステーション」が突出しているが、三部作は甲乙つけがたい。