長女は小学校に上ると学童に通っていたので、(その頃には読書好きの少女になっていたので)、夏休みには学童にある本をぜんぶ読んでしまった。
学校の課題に「夏休みに読んだ本」をリストにせよ、というのがあったので、後で自分で清書しなさい、パパがメモするから言ってごらん、と尋ねたら、200冊以上ものタイトルを挙げたのには驚嘆した。今思えば長女にはアスペルガー症候群に該当する点が多々あったが、それに気づいたのは離婚後に精神疾患と診断され、その中にはアスペルガーも含まれると指摘されて自分でいろいろ調べるようになってからだ。父親の方は後天的にだが、長女には先天的に絶対音感と絶対リズム感があったので、よく微分音(半音のさらに半音)ずらしたり、微妙にBPMを走ったり遅くして歌ってからかったものだ。だが、病人と診断される前なら、アスペルガーという指摘にも納得しなかったと思う。該当しない点も多くあったからだ。
長女は夏休みに読んだ本のタイトルを列挙するうち、いつの間にか人名を並べはじめた。クレオパトラ、卑弥呼、楊貴妃、清少納言、紫式部、北条政子、ジャンヌ=ダルク、マリー・アントワネット、キューリー夫人、ナイチンゲール、アンネ・フランク、それからモンゴメリ、アガサ・クリスティー。
たぶん女性の伝記シリーズだったのだろう。小学一年生の娘から「アガサ・クリスティー」なんて聞くとは思わなかった。書店で児童向けの偉人の伝記シリーズを見ると、手塚治虫やジョン・レノンは定番のようだ(それは昔もで、小学一年生で前年亡くなったばかりのルイ・アームストロングの伝記を読んだ記憶がある)。長女は女性の巻ばかり選んで読んだのかもしれない。
「クリスティー小百科」の「クリスティー・ア・ラ・カルト」によれば、著作数は前回のとおり約100冊。総売上げ部数は「全世界で一億冊以上」から「三億部近く」「四億部以上」、クリスティーの代理人によると「回答不可能」。ユネスコの調査では、世界各国103言語に翻訳がある(シェイクスピアよりも14か国語多い)。
収入については無頓着で、税金対策も兼ねて印税、映画化権、戯曲の上演権などを親戚や友人、慈善事業に分与していた。それでも1970年度(80歳)で10万ポンド(当時のレートで8000万円)にのぼる。社交には興味なし。
次回は作品について触れてみたい。