人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出58

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・3月23日(火)曇り
「朝から患者全員どんよりとした雰囲気。ロビーの読売新聞(拘置所といい精神病院といい、なぜ監禁施設は読売新聞ばかりなのだろうか?読売といえば元々警察の御用新聞で、一般紙でも右寄りで鳴らしているからか?)で、MXテレビのアニメ放映枠が『うる星やつら』に替っていた。しばらく観ないうちにクライマックス間近だった『ガッチャマン』終ってしまったのだな。ベルク・カッツェの正体が男女各一名の容疑者に絞られたところまでは観られたのだが、実はその男女は同一人物でベルク・カッツェは両性具有者だった!というのをガキの頃はフーンとしか思わなかったから楽しみにしていたのだ。それをFさん(一歳上)に話すと、それは悔しいね、特に最終回。瀕死の状態のコンドルのジョーが羽根をピッと飛ばして基地の自爆装置の歯車を止めて、息絶えるシーン。あれはふたりとも鮮明に覚えていたが、ベルク・カッツェの正体判明はFさんもやはり覚えていなかった。大人にとっては両性具有者というのはとんでもない発想だが、子供は平気でスルーしてしまうということだろう」

「患者のどんよりは三連休明けだからだ。今日の午前中の学習プログラムは外来ミーティング(任意)だが、先週の参加で失望した。点数稼ぎなら隔週参加くらいはするが、先週も入院患者で参加したのは自分ひとりだったし。虫歯のKくんの朝食は相変わらずミキサー食で、彼はそぼろ状になっただし巻き玉子と牛乳しか手をつけなかった。今日は誰からも散歩に行こうという話が出ない。爪を切りたいが個人の爪切り所持は禁じられているので貸し出し制になっている。10時まで医療以外の対応はしてもらえないので、それまでいつもの散歩メンバーの雑談に加わる。移室当初はあれだけ文句を言っていたKくんだが、MさんやSmくんも移室してきたし、男性とはFさんくらいしか親しくないが、おばさまたちとは仲良くやっている。男相手には構えてしまうが年配の女性には素直になるタイプで、世話を焼く必要も以前ほどではなくなってきた」

「9時45分からMu女医(注)の診察、KくんやTkさんは主治医なので待機。看護婦二人体制になる。爪切りを借り自室でじっくり切る」(続く)

(注)Mu女医とは退院まで一面識もなかったが、退院後に「佐伯という患者は最低の男」呼ばわりしていると聞いた。勝手にしろ。