人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記218

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(人名はすべて仮名です)
・5月11日(火)雨
(前回より続く)
「昼食のワゴンが届き、配膳が終り、みんなが食べ始めた頃に勝浦くん戻ってくる。梅崎さんはやっちまったってよ。缶チューハイ一本だけで酔いが回ったそうだ。だが毎日飲み潰れて再入院までにはならないだろう、とさっきの梅崎さんの様子からは思える。お酒止めないとお孫さんを抱かせてもらえない、と言ってもいたし。さっきは梅崎さんから退院後に飲んでしまったなんて話は出なかったから、勝浦くんがわざわざ訊いたのだろう。彼にはそういうぶしつけなところがあるのだ」

「杭瀬さんはデイケア通院上仮退院で泊まったり帰ったりしていたが、完全退院になってベッドがむき出しにかたづけられていた。病棟最古参のだめ押しをされたような気になる。滝口さんからのメールが来ていたので掃除の時間までロビーで前半を書き、掃除と午後のプログラム(立川マック)を挟んで後半を書く。滝口さんも自分が退院した後の病棟の様子が気になるらしいので、だいたいこの日記に書いているような内容を書き送る。冬村さんの退院後佐伯さんが患者会代表になるのは予想通りでした、とあるがアルコール科で最古参なのだから他にいないだけだ」

「三時半から男風呂なので向かうと勝浦くんが先客。五分前から開いてたんだ。今日はさっぱりと30分ほどで済ませる。だいたい入浴順は同じだ。四時の点呼には間に合う。日記に取りかかる。一方勝浦くんは薬局でもらってきた『患者さんと家族のための双極性障害(躁鬱病)ハンドブック』を読んで唸っていた。きびしすぎる!どれどれ、なるほど手加減抜きに躁鬱病の治療困難をこと細かに書いてある。そのうち勝浦くんは眠ってしまったので、夕食のワゴンが到着した時声をかけて先に行く」

「配膳が済んでも来ないので起こしに行く。夕食後はAA来院の仕度の陣頭指揮を取る。患者会代表とはまあそういうことだ。今日移室してきた池田くんは何やるんですかね、と周囲に訊いていたが、久里浜から転院してきたという。坂部は昨日AA行ったので免除されて寝ている。降谷智子の奇行も今夜は控え目。金子のおやじは池田くんをつかまえて何やら長々と教えこんでいる。日記を消灯まで書きながら勝浦くんに生返事、もう気持は、入院中に知りあった誰とも会わない退院後に飛んでいる」