人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出62

イメージ 1

・3月23日(火)曇り
(前回から続く)
「入浴前に60.0kgあった体重が湯上がりには59.3kgに落ちていた。これには感心する。夕食、Kくんは虫歯の痛みも引いたのかパンも耳まで食べ(他の人は米飯だが。お粥よりはましだろう)主菜の焼魚もフレーク状に崩して食べていた。偏食で不満の多い彼だが、ようやく食べられるようになると有り難みが染みたようだ。明日からは常食にしてもらう、とKくん。しばらくは彼も偏食や不満はこぼすまい」

「夕食後、第三病棟のナースステーションで服薬し、一度に飲み込めないのでカウンター脇で少しずつ飲んでいると(飲み切ったら看護婦に報告しなければならない)、後ろに並んでいた女の子が看護婦に招かれてえっ、佐伯さんは?もう渡してるわよ。彼女はまだ自分の順ではないと思ったのだ。というより、これまで彼女と面識らしい面識はない(服薬の時すれ違った程度)のになぜ名前を覚えられているのだろう?看護婦はKKと名前のラベルの引き出しから薬を取り出した。ショートカットで目がつぶらな、上下黒のジャージのボーイッシュな子だった。偶然だが小学校の同級生でうちの母が母親どうし親しく可愛がっていた女の子と同姓同名だった」

「自室に戻って読書を続けるつもりが、少しSmくんとおばさまたちの茶飲み話に加わったおかげでSmくんの内縁の奥さん(統合失調症)との馴れ初めから結婚生活の苦労話の独演会を二時間聞かされる。Kくんとは何度も聞かされた話なので折々喫煙室に抜け出し、本人はパキシル3錠のせいと言ってるけどそれだけじゃないぜ、あれは。そうだな、鬱だけじゃないな。少なくとも躁鬱2型だな。おれとKくんは1型だけどな。主治医の前では躁を出さないから、見抜けないんだぜ」

「Smくんはしゃべりまくって紅潮し、満足して寝仕度していた。おばさまたちも就寝前の一服。あの子も大変よねえ。そうですねえ。すると先ほどのKKさんが図書室に歩いてきて、なんで子供がここにいるの!?男の子?女の子?とおばさま方騒然」

「今夜の夜勤はせっかちなNj看護婦なので消灯前に就寝前薬の号令がかかる。第三病棟に行くとナースステーション前に行列。ロシアのパン配給所かよ、とKくん。ピケット・ラインてやつだね。ふと見ると喫煙室にKKさん、そしてSくんがいる。名前を知った経緯を知りたいが、止めておく」