人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

文学史知ったかぶり(12)

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ジェイムズ、トゥエインはリアリズムの範疇では語れませんが、ハウエルズやガーランドは作家の力量とは別に時代の文芸思潮を担った功績がありました。彼らの提唱したリアリズム小説という土壌がなければ20世紀にも直結する自然主義小説という現代文学の基礎は築かれなかったでしょう。

一般に、初期自然主義を代表する作家にクレイン、ノリス、ロンドンの三人が上げられます。前二者は夭逝し、ロンドンは自殺しました。従って十分に円熟した作品を見ることはできませんが、作風はそれぞれ特色あるものです。

1.スティーヴン・クレイン(1871~1900)
『街の女マギー』1893はアメリカ最初の自然主義小説とされるもの。作家的未熟から描写や説明を省いた印象主義的手法が採られ、それが決定的な代表作で南北戦争従軍兵の意識を追った『赤い武勲章』1895に結実し、自然主義と時代を先取りした心理主義的技法が高度に融合している。ただしそれは自然主義の可能性の拡大ではなくリアリズムの追求の結果で、『ジョージの母』1896では成功し『第三の菫』1897から『従軍』1899では失敗する。

2.フランク・ノリス(1870~1902)
ゾラの影響から『獣人ヴァンドーヴァ』1895(1914刊)を書き、社会的転落と犯罪を描いた『死の谷』1899で一躍文名を上げる。ゾラ影響下にありながら作風はドラマティックで、社会小説三部作『オクトパス』1901と『小麦取引所』1903ではメッセージ性を強めたが第三部『狼』着手前に夭逝。本格的な長編小説への志向ではクレイン以上に雄大な作家だった。

3.ジャック・ロンドン(1876~1916)
クレインやノリスのような中産階級出身の大卒作家ではなく徹底した独学で教養を身につけ、古今の西洋文学や最新思想に耽溺。初期の『白い沈黙』1899で早くも現代文化と個性の抑圧を考察、1903年ルポルタージュ『奈落の人々』、動物小説『野生の呼び声』で大成功を納め、冒険小説『海の牙』1904、動物小説『白い牙』1906、未来小説『鉄の踵』1907、自伝作品『マーティン・イーディン』1909と『ジョン・バーレイコーン』1913などを発表。決定論社会主義から自然主義を把握しており、題材に関わらず一貫したテーマが見られる。

次回でさらに詳述してみましょう。