人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記210

イメージ 1

(人名はすべて仮名です)
・5月6日(木)晴れ
「朝の会では連絡事項が多く、滝口さんの退院のあいさつはどさくさ紛れに忘れられてしまった。早くも今日のうちに第三病棟から四名移室してくる。中嶋、島田、三上、佐藤と、一度に四人ではどういう人たちかもすぐにはわからない。午前中の主治医の診察で、来週の診察時に退院日を決めましょう、と言われる。つまり最短なら来週の金曜、14日には退院できるということだ。これには病棟の事情もあるだろう。今は退院患者より入院患者が多いので学習満了患者はなるべく早く退院させたい、という意向もあるはずだ」

「滝口さんが退院して食卓も寂しくなったばかりか勝浦くんの繰り言も一身にかかってくる。午後の学習はグループワーク。自分をアルコール依存症と認めるか?全員が認める根拠をあげる中、一人だけ認めない根拠をあげる。晩はAAメッセージと掲示してあったが来週とわかり、図書室で一気に酒歴発表原稿を仕上げてちょうど夜勤だった担当の谷村看護婦に提出する」

・5月7日(金)小雨のち曇り
「朝一番に夜勤明けの谷村さんから合格、書き直しも補足も不要の太鼓判をもらう。谷村さんがダメ出ししないと気が済まないタイプの人ではなくて良かった。渥美さんの退院日なので見送りたくて、仮病を使って体育を休む。勝浦くんも一般科はノルマではないので残っている。渥美さんの奥さんの到着を待っていると突然心電図検査に呼ばれ、掲示板の記入洩れとのことで、ならば最初から仮病の必要はなかったのだ。心電図検査が終わり、体育組が戻ってきてあと昼食まで15分ごろ渥美さんの奥さん来る。みんなでエレベーター前まで見送る」

「午後は診察が先行したので早めの掃除、酒害教室は診察終了後で午後三時からと遅くなる。今週の女性入浴時間は三時半~なので、現在女性は中里さん、三田さん、降谷さんの三人だけだが混乱する。昨晩酒歴原稿をかたづけてすっかり肩の荷がおりる。夕食後勝浦くんとデイルームで雑談しているとわざわざ降谷智子が寄ってきて30分あまり歌い踊って、デイルーム中が唖然とする。彼女が満足して部屋に戻った後、中里さんに相手にしているわれわれが悪い、と責められる。滝口さんが退院して寂しいのはわかるけど、とも言われる。そういうのではなくて、むしろこちらの方があのくるくるパーに困っているのだが」