人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記227

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(人名はすべて仮名です)
・5月13日(木)晴れ
(前回より続く)
「滝口さんの一通目のメールはすっかり勝浦くんに日にちを合わせて退院するものと決めこんだ文面で、車で迎えに行くから帰りがけ一緒に食事しましょう、と内容は相変わらず、だがようやく決定するので嬉しくてたまらない様子だった。なぜ昨晩送信のメールが今日の昼過ぎにメールチェックして届かなかったか原因はわからないが、二通目のメールは支離滅裂で、一通目のメールに午後をだいぶ過ぎても返信がないので大混乱してしまったらしい、とだけはわかる」

「退院の迎えも勝浦くんとの同日退院も食事もこれまでずっとお断りと言ってきたし、退院の予定が決定したのかしなかったのか、なぜ滝口さんに知らせてこないのか、そこら辺も入り混じって文面が滅茶苦茶。勝浦くんと同日退院ではないのか、それでも迎えに行って食事したいから、とか、入院中にあれほど親しかったんだから断るなんてひどい、とか話題が先走っている。もちろんお迎えも食事も断るから彼女の推測通りなのだが、わざと返信しなかったわけではない」

「何にしろメールが届いた時には時間切れで返信できるのは明日だが、断るなんてひどい、と言うからには滝口さんの方はわざと返信してこなかったように思っているのだろう。で、ひどい、と。ひどい男呼ばわりは今に始まったことではないが、そんなに責められるようなことか?勝浦くんに冗談半分、今日の診察で即決だったらおれが先に退院するかもね、と言ったら真剣に蒼白になり、頼むから17日まではいてくれ!と、これは彼には冗談では済まなかったようだ。勝浦くんより先に退院したらひどい男にはなるだろう」

「夕食後はAAメッセージ。晩はデイルームは静か。金子のおやじは外泊、池田くんは永石さんの介助やAAの条文読み上げ、灰皿掃除の手伝いなど奇妙なところに積極的なのが不思議。勝浦くんが退院間近だからか妙に落ち着かず、部屋を出たり入ったりするが、適当に受け答えして今日の日記を書き進める。朝日新聞夕刊の文芸欄で学生時代の未発表日記という『伊東静雄青春日記・詩へのかどで』、思潮社・7980円が特大記事で紹介されている。退院後に購入したいCDにはサンハウス・ボックスと村八分未発表ライヴ、ジミの未発表スタジオ録音集があるが、本がまたひとつ増えた」