人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記237

イメージ 1

(人物名はすべて仮名です)
・5月16日(日)晴れ
(前回より続く)
「―ここからは夕方記入。日記書いたり一服したりでだらだら過ごし、二時半すぎ滝口さんからのメールに気づく。昨日・今日とご主人の体調が良くないので、万が一の場合は明日行けなくなるかもと勝浦くんにメールしたが様子や機嫌はどうか、先輩の場合も万が一事情があったらすいませんがよろしく、という内容。勝浦くんが隣のベッドでぶつぶつ独り言を言っているのを聞き流しながら、いつもと変りありません、ぼくの方は中止がわかれば当日10時まではメールで、10時以降は電話でも結構、と返信する。勝浦くんは風呂の解錠時間を気にすることしきりで、あと一時間45分、あと一時間半、あと一時間10分、あと45分…」

「風呂の開く15分前に先の段落までの日記も書き、所定のナースステーション前コンセントで充電しておいた携帯電話を預け、充電コードを勝浦くんに返却。一服するとちょうどいいな、と一緒に一服し、解錠とともに一番風呂に入る。これが入院最後の風呂か、と勝浦くん。この入浴後に洗濯物全部を洗い、乾燥機にかけるそうだ。勝浦くんと部屋に戻り雑談、洗濯機を手伝って喫煙室に入ると、金子が先客だった。その前から金子の一床部屋の扉が開いていて、帰ってきているのは誰でもわかった。おかえりなさい。やあ、遅くなりまして。それからカレンダーに印されたわれわれの退院日を見て退院後の生活心得など説教が始まるが、二人とも一服済ませて途中で出てくる。最後までムカつくオヤジだな。まあきみは明日退院なんだから」

「乾燥機にかけた後、勝浦くんは眠ってしまったので図書室から借りっぱなしの庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』(昭44)読み始め、勝浦くんに声をかけたが起きないので洗濯物の取出ししてきて続きを読み、夕食後に読み終える。この作家の隠退が村上春樹のデビューと入れ替わるようだったのも面白い。映画をテレビ放映で冒頭だけ観て、古臭いと敬遠して損した。映画もちゃんと観てみたい。…昨夜は第三病棟だったが今夜はまた第二病棟窓口で就寝前薬。第三は荒れているらしい。朝刊にマラルメ全集完結の広告。そのままデイルームで日曜洋画劇場の『ファンタスティック・フォー』を観て、終了すると消灯時刻になる。勝浦くんと就寝前の一服。今夜で彼の寝相を見るのも最後だ」