人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

里霧へのメール・デート篇

火曜日の朝、きみはモーニング・コールをくれた。前日にぼくはモーニング・コールのリクエストと都合のいい日で昼食だけのデートを誘っていた。
だが、きみ…里霧はもっと大胆にぼくを求めていた。

明日の晩は友人との食事があるから、それをアリバイに昼間デートできる滅多にない機会だわ。あなたの部屋に行く。ランチも散歩もいらない。あなたに抱かれに行く。こうして電話していても、毎日メールしていても、主人への罪悪感は消えない。でも私にはあなたが必要。私は今でも朝飲んで、昼飲んで、晩も飲んでるけど、あなたの存在がなければお酒の量はもっと多かったと思う。あなたと出会ったのは偶然、だけどあなたと出会って私は女になった。罪悪感が同じなら明日こそチャンス、私はあなたに抱かれに行く。…でも明日の朝まで待って。私は決められないかもしれない。あなたに抱かれたい。セックスして初めて感じて気持よかったのはあなただけ。私はあなたに抱かれて、体も心も求めあいたい。明日の朝には決心して、あなたに伝えるから。

会話の中で改めてはっきり判ったのは、彼女の過去の性経験が未熟な交際相手による貧弱なものでしかないこと、性の技巧や性器についてのまったくの無知…予想はついていたが、改めて本人の口から聞くとつらかった。
「だって誰も教えてくれないから、されるままだったわ。ずっと。佐伯さんはどうしてたの?」
「前戯やその後で、会話してる時間の方が長かったよ(笑)。恥ずかしいけど体を見せあって、どこをどうされれば気持いいか体を探りあってた」
「どの人とも?」
「うん。ぼくは彼女たちに教えてもらってたようなもんだね」
「私はされるだけだった…佐伯さんの方が普通なのかしら?」
「そうでもないみたいだね。いろんな雑誌のセックス相談記事を書いてた話はしたよね。男性のセックスの無理解と抑圧に悩む女性がほとんどだった」
ぼくたちは黙った。明日会うにしろ、会えないにしろ、確かめたい。
「ぼくに抱かれたい?」
「ええ。抱かれたい」
「ぼく以外に抱かれたい男はいるかい?」
「いないわ」
福山雅治とぼくなら」
福山雅治(即答)」
「仕方ないな、相手が二枚目スターじゃ。1回くらい許す。福山菌がぼくにも授かるかもしれない」
「冗談よ!あなただけ」

最後に会ってからもう10か月あまり経っている。