人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

里霧へのメール(震災篇1)

可愛い里霧、地震は驚いたね。
こういう時には、今きみはまずお母さんで奥さんでなければいけない。ぼくはもうそのことでつらい気持にはならない。

退院後の初受診で主治医から「今困っていることは?」「退院後に交際を求められている女性がいます」「ああ、Y病院の…」「いや、今回の入院です」さすがに先生も絶句してた。「佐伯はなぜモテる?」のはぼくが存在する限り世界の謎だ(笑)。だからってわけじゃないけど、ぼくはアエリエルなんだ。ずっとね。そしてきみとのキスが、ぼくにとって最高のキスだった。上品で慎ましくて、物足りないほど遠慮がちで、なのに思い切って…ぼくたちに相応しかった。きみはぼくに永遠をくれた。

布団に関する返信は俳句でいくよ。題して連作「寝タバコ布団の夜」。

・寝タバコの夜はしんしんと更けにけり
・生涯を寝タバコ布団で過ごすなり
・寝タバコの布団で過ごす余生かな
・掛け布団だけ無事ならばミノムシに
・握りこぶし寝タバコ布団に貫通す
・ミノムシの夜は娘らが夢枕
・ミノムシの中年忍び泣けり冬
・膝掛けで寝タバコ布団の穴を覆う

…いまいちだな。西東三鬼の「算術の少年忍び泣けり夏」のパロディもあるけどね。ぼくの処女作、凍死体連作はどうだったろう。

・わたくしは餓死か凍死か腐乱死か
・腐乱汁ならば真夏の死がよろし
・寝返りも打てずひたすら硬直す
・窓開けて寝れば凍死体とならむ
・凍死体それでもガスがまだ出るか
・生きながらわれ凍死体となりにけり
・退屈のあまり寝返る凍死体
・凍えれば寝返り打てる凍死体
・凍死体ならばハエすら止まらずに
・見つかるならそれまで寝返り凍死体
・意志もなく我が身砕ける凍死体
・無理矢理に動けばひび割れ凍死体
…きみは「凍死体連作だから面白い」と微妙な賛辞を返句してくれたね(笑)。Kさんが喜んでくれたのは家庭生活を楽しく回想した連作(特に麺類篇)だった。読んでいてパスタが食べたくなり「明日こそはタラコソースを作ろうぞ」と返句をくれた(彼女も大好きだそうだ。素敵な女の子はみんなタラコスパゲッティが好きだね)。