さっき台風の雨の中をびしょ濡れになって帰ってきた。この夏は朝は納豆、夜食は冷奴で乗りきろうと豆腐を買いに行った。ローソンの豆腐は震災後一丁105円に値上がりしていたが53円に戻った(でも2年前に350グラムから300グラムになって実質値上げのままだ)。前にも書いた気がするが、納豆と豆腐はつくづく病人の貴重な蛋白源だと思う。
会計しようとレジに出す。ふとレジのうしろのタバコ棚を見ると、8月上旬生産再開だったはずのゴールデン・バットがひときわ鮮やかな緑に輝いている!個数制限ないんですよね、あるだけくださいと勢いこんだが、1カートンしか入荷していないので、と3ヶしか売ってくれなかった。だが中学の同級生夫婦がやっている駅前のK酒店がある。やはり週に1カートンしか入荷しない「わかば」をバットの生産中止中ぼくに取り置きしてくれているお店だ。
傘を持って出ればよかった。空模様がまたおかしい。K酒店はおばあちゃんが店番していた。あのー、ゴールデン・バットもう発売再開と聞いたんですが、といけないことでも聞くような口調で訊く。おばあちゃんはタバコ棚を見回し(コンビニ含めどのお店でも価格順に置いてあるからゴールデン・バットは不動の右端なのだ)、
「ないね。まだみたいだよ」
そうですか、また来ます、と店を出ようとすると、
「あっ、あったよ」
とおばあちゃん。カウンターの下にまるまる1カートン他のタバコのカートン棚から除けてあったようなのだ。K夫婦が取り置きしてくれていたのはほぼまちがいない。K家で「おばあちゃん売っちゃったの?」ということにならなきゃいいが、説明するのも込み入っているし、今度来たとき今日のカートン買いの件を話せばいいだろう。
これでまたK夫婦に借りができてしまった。実はタバコはK酒店だけでなく丘の上のN煎茶・茶菓子店でも買っていて、ここの加賀まり子似の美人マダムはぼくがタバコを喫い始めた頃、つまり30年経っても美貌と若さに変わりがないというおそろしい人なのだ。40台後半で歳より若く見えるぼくと並んでも少しお姉さんにしか見えないと思う。30年前の高校生としては話すたびに緊張する。
ファッションは円谷プロの特撮ものに出てくるようなレイト60's~アーリー70'sのままだ。こんな非現実的な美人も実在する。これはまあ、そういう趣旨の一文なのだった。