人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ダダイスト辻潤(1)

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

日本のダダイストとして知られる辻潤(つじ・じゅん/1884-1944・浅草生れ)には思い入れが強すぎ、書く前から気が乗らない。
いま辻潤に興味を持つわずかな人は、
(1)妻・伊藤野枝アナーキスト大杉栄の元へ走った事件か(1916年。瀬戸内晴美が「美は乱調にあり」で小説化)、
(2)日本最初の(ということにしておく)ダダイズム詩人・高橋新吉の「ダダイスト新吉の詩」1923の編纂・監修者か、
(3)大正期にロンブローゾ「天才論」、ド・クィンシー「阿片溺愛者の告白」、スティルナー「唯一者とその所有」などの異端文献を次々と翻訳紹介した近代思想研究者(いわば渋沢龍彦的ポジションの先駆者)としてか、
のどれかから入っていくのだと思われる。あと少なくともひとつあった。
(4)昭和期になってからの萩原朔太郎(1886-1942)との篤い友情で、萩原はパトロンの間を転々としながらホームレス生活を続ける辻を賞賛し、ふたりだけで同人誌「ニヒル」を刊行する(1930年)。45、6にもなって結んだ男の友情(しかもどちらも家庭崩壊)には涙ぐましいところがある。
「中年の男同士の友情論・毛ごと煮られている鳥料理」寺山修司
萩原の自称弟子・西脇順三郎が後年書いたように、辻と萩原は「最高の人生は乞食と放浪」という考えで一致していた。これは西脇がそのまま自分の詩に使っている。後で調べよう。

ではぼくはどこから入ったか、というとこれがはなはだあいまいで、気がついたらオリオン社版「辻潤選集」全6巻・別巻1巻を読んでいた。市立図書館が新設され、開架図書に置いてあったからだ。ぼくは中学生の頃から司書のヤベさんに可愛がられていて(でっぷり太り、いつも脂汗をかいている、戦前の探偵小説マニアのおじさんだった)ヤベさんは桃源社夢野久作久生十蘭小栗虫太郎講談社の乱歩・横溝の各全集と、その時点で在庫があるハヤカワ・ポケット・ミステリ全巻を入れてくれた。公私混同の極みだが、ひとりでも読者があればいいのだ。まだ図書館は公民館の分館だった。ぼくは全部読んだ。そしてすれっからしの読書家になった。
(5)もうひとつ。読売文学賞受賞の評伝・山本夏彦「無想庵物語」1989で、武林無想庵(1880-1962)は辻潤の親友だった人だ。

結局序論にしかならなかった。気が向いたら続けよう。