人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

西脇順三郎

西脇順三郎連作長編詩「体裁のいい風景」(大正15年=1926年作)

西脇順三郎(明治17年=1894年生~昭和57年=1982年没) 西脇順三郎(明治17年=1894年生~昭和57年=1982年没)が初めて日本語詩に着手したのは應義塾大学英文学科教授に就任した大正15年(1926年)4月以降のことで、大正15年7月の「三田文学」に4篇同時掲載され…

西脇順三郎「馥郁タル火夫」(昭和2年=1927年作)

西脇順三郎(明治27年=1894年生~昭和57年=1982年没) 「馥郁タル火夫」 西脇順三郎 ダビデの職分と彼の宝石とはアドーニスと莢豆との間を通り無限の消滅に急ぐ。故に一般に東方より来りし博士達に椅りかゝりて如何に滑らかなる没食子が戯れるかを見よ! 集合…

西脇順三郎「薔薇物語」(詩集『Ambarvalia』昭和8年=1933年より)

西脇順三郎第1詩集『Ambarvalia』(椎の木社・昭和8年=1933年9月) 「薔薇物語」 西脇順三郎ヂオンと別れたのは十年前の昼であつた 十月僕は大学に行くことになつて ヂオンは地獄へ行つた 霧のかゝつてゐる倫敦の中を二人が走つた ブリテン博物館の屋根へのぼ…

西脇順三郎「風のバラ」(大正15年=1926年作)

西脇順三郎(明治27年=1894年生~昭和57年=1982年没) 「風のバラ」 西脇順三郎帽子を浅くかむって 拉典人類の道路を歩く 樹木の葉の下と樹木の葉の上を混沌として気が小さくなつてしまふ瞳孔の中に 激烈に繁殖するフユウシアの花を見よ あの巴里の青年は 縞の…

西脇順三郎「林檎と蛇」(大正15年=1926年作)

西脇順三郎(明治27年=1894年生~昭和57年=1982年没) 「林檎と蛇」 西脇順三郎わが魂の毛皮はクスグツたいマントを着た おれの影は路傍に痰を注ぐ 延命菊の中にあるおれの影は実に貧弱である汽車の中で一人の商売人は 柔かにねむるまで自分の家(ウチ)にゐるや…

西脇順三郎「内面的に深き日記」(大正15年=1926年作)

西脇順三郎(明治27年=1894年生~昭和57年=1982年没) 「内面的に深き日記」 西脇順三郎一つの新鮮な自転車がある 一個の伊皿子人(イサラゴジン)が石けんの仲買人になつた 柔軟なさうして動脈のある斑點のあるさうして これを広告するがためにカネをたゝく チ…

西脇順三郎「世界開闢説」(大正15年=1926年作)

西脇順三郎(明治27年=1894年生~昭和57年=1982年没) 「世界開闢説」 西脇順三郎科学教室の背後に 一個のタリポットの樹が音響を発することなく成長してゐる 白墨及び玉葱黍の髪が振動する 夜中の様に もろ\/の泉が沸騰してゐる 人は皆我が魂もあんなでない…

西脇順三郎詩集『近代の寓話』(昭和28年=1953年刊より)

(西脇順三郎明治17年=1894年生~昭和57年=1982年没>) 詩集『近代の寓話』 昭和28年(1953年)10月30日・創元社刊(外箱・表紙・裏表紙) アン・ヴァロニカ 西脇順三郎 男と一緒に―― その男は生物学の教授―― アルプスへかけおちする前 の一週、女は故郷の家にひそ…

室生犀星「舌」(詩集『昨日いらつしつて下さい』昭和34年=1959年8月刊より)

(室生犀星明治22年=1889年生~昭和37年=1962年没>) 舌 室生犀星 みづうみなぞ眼にはいらない、 景色は耳の上に つぶれゆがんでゐる、 舌といふものは おさかなみたいね、 好きなやうに泳ぐわね。(「婦人公論」昭和30年=1955年5月号、エッセイ集『続女ひと』…