人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記203

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(人名はすべて仮名です)
・4月27日(火)曇りのち雨
「昨日は夕方に、グループホームの空き待ちで半年間も入院していた木島さんも福祉ケースワーカーの付き添いで退院していった。急な決定らしく朝の会でもあいさつはなかったし、木島さんが退院するからといって招集がかけられたのでもなく、デイルームにいた人間が目撃しただけだ。あの女だよな、と勝浦くん。そうだろうね。手伝ってもらえない人の気持がわかりますか、という下らない投書をして他人の配膳の手伝い禁止という下らない規則ができてしまった、その投書の主だ。他人と親しくなれないし、ならば超然としていればいいものをやっかむ感情はある。たぶん入院前は自活していて、退院後は自活不可能との診断でグループホームの空き待ちになり半年に及んだのだから気の毒な人なのだが、同情する気にはなれない」

「昨晩はテレビ放映の映画『おくりびと』終了は11時をまわったが、観客も最後まで六人残ったので当直看護婦も特別に映画終了まで消灯を延ばしてくれる。昨年の夏、躁鬱の悪化で二度目に緊急入院した時もOT上映でこれを観ている。なんだか入院とついてまわる。その入院の時はいくつかの要因はあったのだが、ひとつには佐伯さんという人が私を好きみたい、と言い出した妄想癖のある女性がいて彼女自身はむしろ好意的だったらしいが、ご両親が大騒ぎした。離婚以来女性関係といえばこんなことばかりだ。で、彼女はご家族で『おくりびと』を観てきたそうで、良かったですよと言っていた」

「今日は昨日以上に移室の多い日だった。朝の会で昨夕移室してきた井上さん・大芝さんの挨拶があったが井上さんは昼食前に早くも第三病棟に逆戻り。これにはあっけにとられた。さらに昼食後には第三病棟から篠田くん、永石さん、吉川さん、工藤くん(あの工藤とは別人)の四人が移ってくる。もちろん皆中年~初老の男性だ。喫煙室で、降谷智子が、こんなにイケメンのいない病院は初めて!北里はいたよ、女も男も、若くてカワイイ子。じゃあ北里に行きなよ、とムッとして、勝浦くん。冬村さんが、北里はヘルパーも若くてイキがいいしね。こんなやりとりには苦笑するしかない。降谷智子はパピヨンのママのミミちゃんかもしれないが、本人だって頭のネジの飛んだ中年女がイケメンうんぬんとは、ちゃんちゃらおかしい」(続く)