人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

現代詩

金子光晴「おっとせい」「洗面器」(詩集『鮫』昭和12年・詩集『女たちへのエレジー』昭和24年より)

(金子光晴明治28年=1895年生~昭和50年=1975年没>) 金子光晴詩集『鮫』人民社・昭和12年8月=1937年刊 おっとせい 金子光晴 一 そのいきの臭えこと。 口からむんと蒸れる、 そのせなかがぬれて、はか穴のふちのやうにぬらぬらしていること。 虚無をおぼえる…

高村光太郎「根付の国」「淫心」(詩集『道程』大正3年=1914年刊より)

高村光太郎詩集『道程』・大正3年10月(1914年)抒情詩社刊 (明治44年、自宅アトリエにて、29歳の高村光太郎) 根付の国 高村 光太郎 頬骨が出て、唇が厚くて、眼が三角で、名人三五郎の彫つた根付(ねつけ)の様な顔をして、 魂をぬかれた様にぽかんとして 自分…

室生犀星「舌」(詩集『昨日いらつしつて下さい』昭和34年=1959年8月刊より)

(室生犀星明治22年=1889年生~昭和37年=1962年没>) 舌 室生犀星 みづうみなぞ眼にはいらない、 景色は耳の上に つぶれゆがんでゐる、 舌といふものは おさかなみたいね、 好きなやうに泳ぐわね。(「婦人公論」昭和30年=1955年5月号、エッセイ集『続女ひと』…

中西梅花「出放題」(『新體梅花詩集』明治24年=1891年刊より)

『新體梅花詩集』明治24年(1891年)3月10日・博文館刊。 四六判・序文22頁、目次4頁、本文104頁、跋2頁。(ダストジャケット・本体表紙) 日本の現代詩の起点は北村透谷(明治元年=1868年生~明治27年=1894年)5月16日縊死自殺・享年25歳)の存在が真っ先に上げ…

祝算之助「町医」(詩集『島』昭和22年=1947年刊より)

*町 医 祝 算之助 夜とともに、町医者はやつてきた。家来をつれて。その家来は、たぶん同じ猟ずきな仲間ででもあろう。 ちいさな部屋のなかは、黄いろい絵具が、べたべたちらかっている。私はどのようにも、片ずけきれないのだ。 そのまんなかに、金魚(きん…

二つの「道程」~高村光太郎「道程」(大正3年=1914年)

(明治44年=1911年・28歳の高村光太郎) 詩集 道程 (抒情詩社・大正3年10月25日刊) 「道 程」 高 村 光 太 郎 僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る ああ、自然よ 父よ 僕を一人立ちにした広大な父よ 僕から目を離さないで守る事をせよ 常に父の気魄を僕に…

高村光太郎「母をおもふ」(昭和2年=1927年)

(岩手移住時代の高村光太郎) 母をおもふ 高村光太郎 夜中に目をさましてかじりついた あのむつとするふところの中のお乳。「阿父(おとう)さんと阿母(おかあ)さんとどつちが好き」と 夕暮の背中の上でよくきかれたあの路次口。鑿(のみ)で怪我をしたおれのうし…

小野十三郎「蓮のうてな」( 詩集『拒絶の木』昭和49年=1974年刊より)

[ 小野十三郎(1903-1996)近影、創元社『全詩集大成・現代日本詩人全集10』昭和29年('54年)12月刊より ] 詩集『拒絶の木』思潮社・昭和49年(1974年)5月1日刊 昭和50年(1975年)2月・読売文学賞受賞 『小野十三郎著作集』第二巻・筑摩書房(平成2年=1990年12月…

小野十三郎「フォークにスパゲッティをからませるとき」(詩集『いま いるところ』昭和64年=1989年刊より)

[ 小野十三郎(1903-1996)近影 ] (82歳(1985年)) (51歳(1954年)) (23歳(1926年)) 詩集『いま いるところ』 浮遊社・昭和64年(1989年)7月7日刊 『小野十三郎著作集』全三巻・筑摩書房(平成2年=1990年)9月・12月・平成3年=1991年2月刊) 『小野十三郎著作集』…

ゴッドフリート・ベン詩集『死体検死所 (モルグ)』(1912年刊)より

ゴッドフリート・ベン詩集『死体検死所(モルグ)とその他の詩』Morgue und andere Gedichte (上から1924年再版・1912年3月初版本・2017年最新普及版) 死体検死所(モルグ)・I~V I・小さなえぞぎく(アスター) 溺死したビールの運送屋の男が解剖机に持ち上げら…