サイレント映画 Silent
歴史は誰かが作ったみたいに良くできているといいますが、大手デクラ社が'20年2月に公開した『蜘蛛 第2部 : ダイヤの船』と『カリガリ博士』がドイツ表現主義映画出現の分かれ目だったなら、大手ウーファ社が'24年11月に公開した『裏町の怪老窟』が表現主義…
こういう機会でないと感想文を書くこともなければご紹介も唐突すぎる「幻の名作」というのはあるもので、ロン・チェイニー主演作品『天罰』'20(監督ウォーレス・ワースリー)や『ハートの一』'21(同)、『影に怯えて』'22(監督トム・フォーマン)などがそうです…
この映画日記はあらかじめ毎日1本1か月分の用意してあった映像ソフト(またはサイト上の視聴リンク)で映画の視聴プログラムを組んで、なるべく初見ではなく学生時代までに観た2,000本くらいとその後観た数百本、映像ソフトで初めてというものも購入してすぐ一…
'20年代初頭のドイツ映画界には監督、カメラマン、俳優以外にも美術品装置や脚本家にキーパーソンとなるイノヴェーター的才能を輩出したことでも先駆性があり、美術や脚本主導で作品の企画の性質が決まるのは演出(監督)や撮影(カメラマン)と同等の力を持つこ…
映画感想投稿サイトなどを見ると稀に極端なサイレント時代の映画全般へのこき下ろし感想文を見かける時もあり、それがプロットやストーリーなど脚本レベルのものなら好きずきですが、セットや衣装、俳優のメイクや演技の所作となるとだんだん独断的な意見に…
サイレント時代の映画史上でもグリフィスの『国民の創生』'15、『イントレランス』'16に続いて画期的作品になったのが、やはりグリフィスの『散り行く花』'19と同年に公開されたシュトロハイム『アルプス颪』'19(アメリカ)、ガンス『戦争と平和(戦渦の呪い)…
11月は久しぶりにサイレント時代のドイツ映画でも観ようと、つねづね戦前の映画評価の重要参考文献にしている筈見常夫『映画作品辞典』'54(弘文社アテネ文庫・昭和29年刊)、田中純一郎『日本映画発達史』'57(中央公論社・昭和32年刊)に上がるサイレント時代…
デンマークの映画監督カール・テオドア・ドライヤー(1889-1968)は、サイレント時代の1919年に監督デビューし、サイレント時代に9作、サウンド・トーキー以降に5作と寡作ながら、短編8編を含めて全監督作品のフィルムが現存している、というサイレント時代か…
(初のヴァンパイア役に扮したチェイニー) ロン・チェイニーの出演映画を観直した感想文も今回で一旦区切りで、フィルムが現存しDVD化されている長編も他には4、5作を数えるきりですから(今後新たにDVD化される作品もあるかもしれませんが)、主要なものはほぼ…
(中国貴族の長老に扮したロン・チェイニー) 前回ご紹介した『黒い鳥』'26の後のチェイニー映画は'26年に『マンダレイの道』『英雄時代』があり、'27年には今回ご紹介する『ミスター・ウー』『知られぬ人』『嘲笑』が続き、次回ご紹介する『真夜中のロンドン…
(『オペラの怪人』のテクニカラー場面) ロン・チェイニー(1883-1930)の主演映画でもっとも名高いのは『ノートルダムの傴僂男』'23と『オペラの怪人』'25ですが、この2作のうち『オペラの怪人』の方が現代でも人気が高いでしょう。リメイク回数は『ノートルダ…
ようやくロン・チェイニーの一代ブレイク作『ノートルダムの傴僂男』にたどり着きました。'12年に短編映画デビューしたチェイニーが長編映画に起用されるようになったのは'16年ですが(ノンクレジット出演作が単発で'14年に1作ありますが)、長編映画の出演作…
(『大地震(The Shock)』'23の別題製作告知) '22年度公開のロン・チェイニー出演作品は8作あり、'21年12月封切り予定が諸般の事情で'22年初頭に公開が延びたらしい『Voices of the City』(ウォーレス・ワースリー監督作)に続いて前回ご紹介した『狼の血』(5月…
1921年のロン・チェイニー出演作は佳作『ハートの一』を含む3作きりで、『ハートの一』以外の2作は散佚作品になっていますが、'12年の映画デビューから'15年まではアメリカ映画自体も短編が主流で、長編出演はノンクレジットの端役で'14年に1作あるきりだっ…
前回の『天罰』は1920年にロン・チェイニーが出演した6作の作品中4作目に公開(8月)されたものでしたが、今回取り上げる最初の『大北の生』と次作『法の外』は『天罰』に続き'20年度のチェイニー映画の5作目、6作目に当たります。『天罰』が強烈だったので『…
(『天罰(The Penalty)』'20の1シーンより) ロン・チェイニー(Lon Chaney, 1880-1930)は『ノートルダムの傴僂男』'23、『オペラの怪人』'25(邦題『オペラ座の怪人』はリメイク作品以降のタイトル)の2作だけでも映画史に残る俳優ですが、映画がサウンド・トー…
前作『キートンの蒸気船』を最後に'20年以来短編19作、長編10作をキートン自身の監督・脚本・主演で送り出してきたバスター・キートン・プロダクションは社長でプロデューサーのジョセフ・M・スケンクによって解散(正確には映画製作休止、キートンの個人財務…
古いリストを見ていたので以前の回に「現在アメリカ国立フィルム登録簿に選出されているキートン作品は「キートンのマイホーム」'20と「キートンの警官騒動」'22(以上短編)、『キートンの探偵学入門』'24と『キートンの大列車追跡』'27、『キートンのカメラ…
キートン作品のうち名高い'20年代のバスター・キートン・プロダクション製作の長編は短編の傑作選と抱き合わせで'70年代にフランス映画社の配給によってリヴァイヴァル公開されました。このご紹介ではリヴァイヴァル公開でのリニューアル・タイトルを現在で…
キートン長編は今回ご紹介する作品あたりから全盛期を迎えます。バスター・キートン・プロダクションの長編作品は平均製作費20万ドル+フィルム代・宣伝費15万ドルでしたが、1925年3月公開のキートンの『セブン・チャンス』は興行収入59万8288ドルで、これま…
チャーリー(チャールズ)・チャップリン(1889-1978)、ハロルド・ロイド(1893-1971)と並んでアメリカのサイレント映画の3大喜劇王と称されるバスター・キートン(1895-1966)は芸人一家に生まれたので、少年時代に芸人となったチャップリン、学生時代に俳優とな…
まだたった4回なのにハロルド・ロイドの長編喜劇は今回でサイレント時代は終わりで、次回からはトーキー作品になります。トーキー以降ロイドは寡作になり、1938年の『ロイドのエジプト博士』を最後に引退、その後1作きりの復帰作でプレストン・スタージェス…
同じ映画監督なり俳優なりの作品を年代順に続けて観ていくと(この映画日記はそういうセレクトばかりですが、毎日1本映画を観るにはこういう選び方の方が、次に何を観ようか迷わずに済んで、便利で楽なのです)いろいろ印象がかぶって単品で観るより良く見える…
この映画日記は主に古い映画の感想文ばかりですが、日本公開時のポスターはさすがに戦前作品はほとんど無理としてもなるべく公開時の本国版ポスターを参考画像に探してくることにしています。サイト上で探せて転用できるものに限られますが、日本映画の戦前…
アメリカ映画サイレント時代の三大喜劇王は'60年代~'70年代までにはチャールズ(チャーリー)・チャップリン(1889-1977)、ハロルド・ロイド、バスター・キートン(1895-1966)という評価が定着しましたが、最初にサイレント時代の喜劇映画史を概括したのは映画…
ハリウッド映画の黄金時代と言える'20年代後半~'50年代前半の担い手になったのは1880年代~20世紀初頭生まれの監督たちですが、特に1890年代生まれの監督たちはサイレント時代とトーキー以後をまたいで長いキャリアを送った監督が多く、1896年2月29日マサチ…
ドイツ出身の映画監督エルンスト・ルビッチ(1892-1947)は俳優から出発した映画人で、人気喜劇俳優ヴィクトル・アルノルドに弟子入りし舞台に立っていましたが、1912年に劇団の座長演出の映画に出演したのがきっかけで映画に傾倒し、喜劇俳優として映画界入り…
ひさしぶりにスタンバーグの映画でも観ようかなと今回、一般的に全盛期とされる'25年~'35年の作品中から9本を観直して、あまりの演出の冴えと面白さに目を疑うほどでした。最初に観たスタンバーグの映画は『嘆きの天使』か『モロッコ』か、どちらが先か憶え…
ようやく今回で10枚組DVDセット『名作映画 サイレント劇場』(コスミック出版)をひと通り観終えましたが当然これも現存していて何らかの形で観ることのできる日本のサイレント映画の牛尾の一毛程度、しかもこの10枚組には名作・傑作と定評あるものは含まれて…
日本映画の'20年代サイレント時代劇をコスミック出版の10枚組DVDボックス『名作映画 サイレント劇場』収録作品で観る第2回は、サイレント時代の大作として日本映画史に名を残す日活の池田富保監督作品『建国史 尊王攘夷』と、データ以上の文献がないマキノ省…