人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

#映画レビュー

映画日記2018年8月30日~31日/ カール・Th・ドライヤー(1889-1968)の後期作品(3)

ついつい前回はドライヤーの前作『怒りの日』'43について「個人の嗜好を超えた傑作」と大上段な言い方をしてしまいましたが、各種映画評投稿サイトを見るとドライヤーの『怒りの日』、『奇跡』'55、『ゲアトルーズ』'64の3作は案外「面白くない」「好きにな…

映画日記2018年8月28日~29日/ カール・Th・ドライヤー(1889-1968)の後期作品(2)

前作で最後のサイレント作品になった第9作『裁かるゝジャンヌ』'28も監督カール・Th・ドライヤーはトーキー作品にしたい希望でしたが、機材面での製作技術上の困難と、まだヨーロッパ映画界ではトーキー作品への移行が本格化しておらず上映設備を導入する映…

映画日記2018年8月25日~27日/ カール・Th・ドライヤー(1889-1968)の後期作品(1)

デンマークの映画監督カール・テオドア・ドライヤー(1889-1968)は、サイレント時代の1919年に監督デビューし、サイレント時代に9作、サウンド・トーキー以降に5作と寡作ながら、短編8編を含めて全監督作品のフィルムが現存している、というサイレント時代か…

映画日記2018年8月22日~24日/「千の顔を持つ男」ロン・チェイニー(1883-1930)主演映画(8)

(初のヴァンパイア役に扮したチェイニー) ロン・チェイニーの出演映画を観直した感想文も今回で一旦区切りで、フィルムが現存しDVD化されている長編も他には4、5作を数えるきりですから(今後新たにDVD化される作品もあるかもしれませんが)、主要なものはほぼ…

映画日記2018年8月19日~21日/「千の顔を持つ男」ロン・チェイニー(1883-1930)主演映画(7)

(中国貴族の長老に扮したロン・チェイニー) 前回ご紹介した『黒い鳥』'26の後のチェイニー映画は'26年に『マンダレイの道』『英雄時代』があり、'27年には今回ご紹介する『ミスター・ウー』『知られぬ人』『嘲笑』が続き、次回ご紹介する『真夜中のロンドン…

映画日記2018年8月16日~18日/「千の顔を持つ男」ロン・チェイニー(1883-1930)主演映画(6)

(『オペラの怪人』のテクニカラー場面) ロン・チェイニー(1883-1930)の主演映画でもっとも名高いのは『ノートルダムの傴僂男』'23と『オペラの怪人』'25ですが、この2作のうち『オペラの怪人』の方が現代でも人気が高いでしょう。リメイク回数は『ノートルダ…

映画日記2018年8月13日~15日/「千の顔を持つ男」ロン・チェイニー(1883-1930)主演映画(5)

ようやくロン・チェイニーの一代ブレイク作『ノートルダムの傴僂男』にたどり着きました。'12年に短編映画デビューしたチェイニーが長編映画に起用されるようになったのは'16年ですが(ノンクレジット出演作が単発で'14年に1作ありますが)、長編映画の出演作…

映画日記2018年8月10日~12日/「千の顔を持つ男」ロン・チェイニー(1883-1930)主演映画(4)

(『大地震(The Shock)』'23の別題製作告知) '22年度公開のロン・チェイニー出演作品は8作あり、'21年12月封切り予定が諸般の事情で'22年初頭に公開が延びたらしい『Voices of the City』(ウォーレス・ワースリー監督作)に続いて前回ご紹介した『狼の血』(5月…

映画日記2018年8月7日~9日/「千の顔を持つ男」ロン・チェイニー(1883-1930)主演映画(3)

1921年のロン・チェイニー出演作は佳作『ハートの一』を含む3作きりで、『ハートの一』以外の2作は散佚作品になっていますが、'12年の映画デビューから'15年まではアメリカ映画自体も短編が主流で、長編出演はノンクレジットの端役で'14年に1作あるきりだっ…

映画日記2018年8月4日~6日/「千の顔を持つ男」ロン・チェイニー(1883-1930)主演映画(2)

前回の『天罰』は1920年にロン・チェイニーが出演した6作の作品中4作目に公開(8月)されたものでしたが、今回取り上げる最初の『大北の生』と次作『法の外』は『天罰』に続き'20年度のチェイニー映画の5作目、6作目に当たります。『天罰』が強烈だったので『…

映画日記2018年8月1日~3日/「千の顔を持つ男」ロン・チェイニー(1883-1930)主演映画(1)

(『天罰(The Penalty)』'20の1シーンより) ロン・チェイニー(Lon Chaney, 1880-1930)は『ノートルダムの傴僂男』'23、『オペラの怪人』'25(邦題『オペラ座の怪人』はリメイク作品以降のタイトル)の2作だけでも映画史に残る俳優ですが、映画がサウンド・トー…

映画日記2018年7月29日~31日/マルクス兄弟の長編喜劇(4)

この映画日記には初めて観る映画のことは書かず(テレビ放映映画などもけっこう観ていますし、中古盤や輸入盤で購入して――2駅以内にレンタル店が1軒もなく、また観たい映画はたいがいレンタル店に置いていないか、交通費より買った方が安くつく映画ばかりなの…

映画日記2018年7月26日~28日/マルクス兄弟の長編喜劇(3)

マルクス兄弟の映画は、本格的映画デビューとなったパラマウントから5作('29年~'33年)、MGM移籍後に5作あり('35年~'41年)、それにチーム解散記念作品である独立プロ製作、ユナイテッド・アーティスツ配給の『マルクス捕物帖』'46の11作が日本劇場公開もさ…

映画日記2018年7月24日・25日/マルクス兄弟の長編喜劇(2)付・全米映画協会選喜劇映画ベスト100

映画人としてのマルクス兄弟の現役期間は存在感の大きさの割には短く、'29年の『ココナッツ』から'33年の『吾輩はカモである』までのパラマウントでの5作、'35年の『オペラは踊る』から'41年の『マルクス兄弟デパート騒動』の5作、'46年の独立プロによるユナ…

映画日記2018年7月21日~23日/マルクス兄弟の長編喜劇(1)

サウンド・トーキー時代になってから映画デビューしてサイレント喜劇に代わる新しいトーキー時代の喜劇映画スターになったチームがマルクス兄弟です。マルクス兄弟と同時期の喜劇映画スターにはローレル&ハーディやW・C・フィールズも上げられますが、サイ…

映画日記2018年7月19日・20日/バスター・キートン(1895-1966)の長編喜劇(8)

キートンはMGMとの契約終了以降36編の短編、3作の長編主演作があるそうですが、アメリカでの短編はいずれも長編の添え物扱いの余興的作品として製作・公開され、長編3作はフランスで1作、イギリスで1作、メキシコで1作といった具合でアメリカではずっと後に…

映画日記2018年7月17日・18日/バスター・キートン(1895-1966)の長編喜劇(7)

トーキー以降のキートン主演映画は出来自体はごく平均的な同時代のアメリカ娯楽映画の水準とも言えて、'30年代初頭のトーキー作品は一部の傑出した監督の作品、トーキーへの順応が上手かった監督の作品、企画が上手くいった作品以外はサイレント時代後期の'2…

映画日記2018年7月14日~16日/バスター・キートン(1895-1966)の長編喜劇(6)

今回からのキートンは前回同様のMGM映画社移籍後のキートンが監督権を与えられずMGMの製作体制の中で作られたもので、今回の『キートンのエキストラ』がキートンの初サウンド・トーキー作品になります。一般にキートンはサイレント映画時代の喜劇俳優とされ…

映画日記2018年7月12日・13日/バスター・キートン(1895-1966)の長編喜劇(5)

前作『キートンの蒸気船』を最後に'20年以来短編19作、長編10作をキートン自身の監督・脚本・主演で送り出してきたバスター・キートン・プロダクションは社長でプロデューサーのジョセフ・M・スケンクによって解散(正確には映画製作休止、キートンの個人財務…

映画日記2018年7月10日・11日/バスター・キートン(1895-1966)の長編喜劇(4)

古いリストを見ていたので以前の回に「現在アメリカ国立フィルム登録簿に選出されているキートン作品は「キートンのマイホーム」'20と「キートンの警官騒動」'22(以上短編)、『キートンの探偵学入門』'24と『キートンの大列車追跡』'27、『キートンのカメラ…

映画日記2018年7月7日~9日/バスター・キートン(1895-1966)の長編喜劇(3)

キートン作品のうち名高い'20年代のバスター・キートン・プロダクション製作の長編は短編の傑作選と抱き合わせで'70年代にフランス映画社の配給によってリヴァイヴァル公開されました。このご紹介ではリヴァイヴァル公開でのリニューアル・タイトルを現在で…

映画日記2018年7月4日~6日/バスター・キートン(1895-1966)の長編喜劇(2)

キートン長編は今回ご紹介する作品あたりから全盛期を迎えます。バスター・キートン・プロダクションの長編作品は平均製作費20万ドル+フィルム代・宣伝費15万ドルでしたが、1925年3月公開のキートンの『セブン・チャンス』は興行収入59万8288ドルで、これま…

映画日記2018年7月1日~3日/バスター・キートン(1895-1966)の長編喜劇(1)

チャーリー(チャールズ)・チャップリン(1889-1978)、ハロルド・ロイド(1893-1971)と並んでアメリカのサイレント映画の3大喜劇王と称されるバスター・キートン(1895-1966)は芸人一家に生まれたので、少年時代に芸人となったチャップリン、学生時代に俳優とな…

映画日記2018年6月29日・30日/湯浅憲明(1933-2004)監督時代のガメラ映画(3)

いやあ観た観た、1週間毎日ガメラ映画を1本ずつ観るなどこれまでなかっただけに、「初期数作をピークに子供向けの怪獣映画化して先細りしていったガメラ映画シリーズ」などという誤った認識不足を反省する良い機会になりました。直前にゴジラ映画シリーズか…

映画日記2018年6月26日~28日/湯浅憲明(1933-2004)監督時代のガメラ映画(2)

第7作『ガメラ対深海怪獣ジグラ』'71で大映倒産のため一旦シリーズの終わりを迎えるまでのガメラ映画中でこの1本、というくらい人気が高いのは今回ご紹介する第3作『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』でしょう。筆者の記憶では同作はテレビ放映頻度もシリーズ…

映画日記2018年6月24日・25日/湯浅憲明(1933-2004)監督時代のガメラ映画(1)

今回からは大映の「ガメラ」シリーズを第1作『大怪獣ガメラ』'65、第2作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』'66、第3作『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』'67、第4作『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』'68、第5作『ガメラ対大悪獣ギロン』'69、第6作『ガメラ対大魔獣…

映画日記2018年6月22日・23日/ 本多猪四郎(1911-1993)監督時代のゴジラ映画より(3)

前2回で第6作までのゴジラ映画の概要はおおよそ紹介しましたので、以降はどんな作品が続いたかを列挙します。まず第7作と第8作の監督は福田純(1923-2000)が担当し、'66年(昭和41年)12月17日公開の第7作『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』は観客動員数4…

映画日記2018年6月19日~21日/ 本多猪四郎(1911-1993)監督時代のゴジラ映画より(2)

さてようやく、本格的な怪獣対決路線のゴジラ映画の時代がやってきました。ここからカラー、ワイドスクリーンにもなり、東宝のドル箱作品だけあってレストアされた現行の映像ソフトではVHSテープやLD時代以上に素晴らしい画質を堪能できるのは嬉しいことです…

映画日記2018年6月17日・18日/ 本多猪四郎(1911-1993)監督時代のゴジラ映画より(1)

この分野はちょっと独特なので下手なことを書くと石が飛んできそうで怖いですが、特撮映画には特殊な愛好者層があって、一般映画の観客の感覚とは異なる評価基準が働いているらしく大らかなのかシビアなのかよくわからないところがあります。また特撮といっ…

映画日記2018年6月15日~16日/喜劇王ハロルド・ロイド(1893-1971)長編コレクション(6)

チャップリン、キートンと並ぶ喜劇王ハロルド・ロイドの長編映画作品を追ってきたこの感想文も今回が最後で、まだあとロイドの長編には引退作『ロイドのエヂプト博士』'38と、戦後に1作きりの復帰作でプレストン・スタージェス監督の『ハロルド・ディドルボ…