人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

恋は愚かというけれど(シナトラ、ヘロン&ウルフ'51)

モダン・ジャズ以降のスタンダード曲は大体ビリー・ホリデイとフランク・シナトラで決る。この曲はシナトラ初の自作曲で、初演はこれ。 [Frank Sinatra-I'm A Fool To Want You]51.3.27(画像4) http://m.youtube.com/watch?v=hOKdDwMxfOc 奇しくも同年生まれ…

アル中病棟入院記178

(人名はすべて仮名です) ・4月12日(月)曇りのち雨 「昨晩、消灯後のデイルームで根島看護婦とわれわれ患者との間でひと悶着あって、病院側のルーズさが問題だったので冬村さんが先頭に立って患者を代表するかたちだった。ホワイトボードに酒歴発表の記載がな…

不幸せでもいいの(ロジャース&ハート/ミュージカル挿入歌'36)

これも先行ヴァージョンを抜いてビリー・ホリデイ版が決定盤になった一曲。逝去一年半前の録音。 [Billie Holiday & Ray Ellis Orch.-Glad To Be Unhappy]58.2.20(画像1) http://m.youtube.com/watch?v=eLQLvJb_rUU 初ヒットはこの人で、十分に良い。 [Lee W…

アル中病棟入院記177

(人名はすべて仮名です) ・4月11日(日)晴れ (前回から続く) 「お照さんにそう誘われる前にも喫煙室の先客だった松本さんが、こうして皆でメシ食ってワイワイやってられるのも今だけだしな、と話に加わりに行ったが、やることがありますから、と断って部屋に…

偽ムーミン谷のレストラン1(?)

ムーミン谷にレストランができたそうだよ、とムーミンパパが新聞から顔を上げると、言いました。今朝のムーミン家の居間には、 ・今ここにいる人 ・ここにいない人 ―のどちらも集まっています。それほど広くもない居間に全員が収まるのは、ムーミン谷の住民…

文学史知ったかぶり(5)

D.H.ロレンスは小説家としても時代を築いた人でしたが詩人・エッセイスト、そして批評家としてはそれ以上の業績を残した文人かもしれません。瑞々しい感受性は小説よりも詩やエッセイに凝縮され、また小説を強靭なものにしている批評意識は批評そのものにい…

アル中病棟入院記176

(人名はすべて仮名です) ・4月11日(日)晴れ (前回から続く) 「山崎さんの胃カメラの検査結果がどうだというよりも羽田有紗は要するに人の気を惹きたいので、ショックだったというからには予想以上に悪かったということだろうが、それと自分の姉がNo.1キャバ…

『金輪際』1

昨日はこのタイトルで作文しようとしたら、この三年間のブログを振り返って、という前振りだけが長くなり、回顧的趣きになってしまったのだ。 これは確かに以前にも書いたのだが、現在までのところ最後の精神科入院、2010年12月~2011年03月から退院して、そ…

思い出のたね(ミュージカル主題歌'36)[後]

後編は名盤「ザ・ヴォイス・オブ・フランク・シナトラ」から。これがファースト・アルバムになる。30歳にして大歌手の貫禄。 [Frank Sinatra-These Foolish Things]45.7.30(画像4) http://m.youtube.com/watch?v=-o_iCsXqasM これも名盤「アット・ジ・オペラ…

アル中病棟入院記175

(人名はすべて仮名です) ・4月11日(日)晴れ (前回から続く) 「土曜日は掃除があるが日曜祝日は掃除もラジオ体操もないので、昼食後は午後四時の点呼で生返事する以外ずっと寝ていたが、四時半には自然に目が醒めてしまったので、一番風呂に入る。湯上がりに…

『模倣と反復』

このブログを始めてからそろそろ満三年になる。五月下旬だったと思う。当初は手当たり次第に投稿していたがあまり多くても、と一日一件に抑えていた。同年(2011年)八月に急性腸炎で入院し二週間のブランクができ、退院後から一日二件で一記事あたり1000文字…

思い出のたね(ミュージカル主題歌'36)[前]

珍しくイギリス産のミュージカル曲で、競作が相次いだがやはりこの人がジャズのスタンダード曲に定着させた。 [Billie Holiday-These Foolish Things]36.6.30(画像4) http://m.youtube.com/watch?v=2_20tKuKtF8 器楽ではビリーとも親交の深いこの人の愛奏曲…

アル中病棟入院記174

(人名はすべて仮名です) ・4月11日(日)晴れ (前回から続く) 「昨日に続いて眠いが、渥美さんにすすめられて先に東京新聞を読む。東京新聞は簡潔でいい、廉価だし。今回は計画入院だったから新聞もあらかじめ止められたが、前二回の入院では緊急入院だったか…

文学史知ったかぶり(4)

どのような文学運動でもそれを生み出した時代思潮抜きには読み解くのが困難です。例えばフランス・ロマン主義についても歴史的出自を探るならば、出発点はルネッサンス期のユマニスムまで行き着く。しかしユマニスムとロマン主義が直結するものでないなら、…

アル中病棟入院記173

(人名はすべて仮名です) ・4月10日(土)晴れ (前回から続く) 「これまでの入院、ただし一般精神科だが、そこでも上映会があったのは寅さんや釣りバカ、『ホーム・アローン』や『おくりびと』(最後のは違うか)などの、俗に言うファミリー映画ばかりだった。た…

アイ・キャント・ゲット・スターテッド(V. デューク/ミュージカル挿入歌'36)

これも発表即スタンダード化した大ヒット曲で、旧邦題『言い出しかねて』は現在は廃されている。あなたにはかなわない、という内容の歌詞が正しい。 [Billie Holiday-I Can't Get Started]38.9.15(画像4) http://m.youtube.com/watch?v=W3cKifJYLi8 オリジナ…

アル中病棟入院記172

(人名はすべて仮名です) ・4月9日(金)晴れ (前回から続く) 「退屈でどこか不条理な療養環境では人はあえて他愛ない興味で正気を保とうとする。それは『魔の山』や『富士』のような小説でも描かれているし、また『死の家の記録』や『アンネの日記』『収容所群…

文学史知ったかぶり(3)

今回も概括ゆえの省略や飛躍が避けられませんが、ご寛恕ください。 メディアとして考えると、詩歌はまず口承文学として出発し、宗教儀式由来の典礼劇や共同体の祭典劇から独立して演劇と結びつき、文学としての戯曲が成立したとされます。その段階ですでにプ…

アル中病棟入院記171

(人名はすべて仮名です) ・4月9日(金)晴れ (前回から続く) 「その時は勝浦くんが滝口さんをなにかとさすが二児の母だ、と言うのや金田さんが勝浦くんをぼくちゃんと呼ぶ、そうした馴れ合いの雰囲気そのものに対する嫌悪感が一気に昂じたのもあるだろう。テー…

イージー・トゥ・ラヴ(コール・ポーター/映画主題歌'39)

前回同様ビリー・ホリデイが採用してジャズ・スタンダードになった曲は他の歌手ではシナトラしか太刀打ちできないくらい多い。これも発表と同時にビリーの録音でスタンダードになった。大胆にメロディを崩している。 [Billie Holiday-Easy To Love]36.10.20(…

アル中病棟入院記170

(人名はすべて仮名です) ・4月9日(金)晴れ (前回から続く) 「仲村画伯は冬村さんたちの四人部屋に移ったが、杭瀬さんと仲村画伯どちらがこちらの部屋に来たとしても勝浦くんは不満だったろう。どうせならあの人を動かして(渥美さんのこと)空いた二床に親分と…

文学史知ったかぶり(2)

さて、前回では「ミメーシス」の作者・作品選択に困惑された方もいらっしゃるかと思います。スタンダール、バルザック、フローベールを取り上げた第十八章以降なら、と具体的なご指摘もいただきました。 実はこの本、巻末に人名・作品目次はありますが各章に…

アル中病棟入院記169

(人名はすべて仮名です) ・4月9日(金)晴れ 「受診を終えて、病院食のライスの大盛りがあっさり通ったので嬉しい。言ってみるものだ。アルコール依存症と診断された人はなにかしら成人病に踏み込んでいる可能性も高いわけで、少なくとも身体的には健康体だと…

気ままな暮し(イージー・リヴィング/同名映画主題歌'37)

映画公開からすぐに録音、レスター・ヤング最高のテナー演奏と共にスタンダードに定着させた名唱が、 [Billie Holiday-Easy Living]37.6.1(画像1) http://m.youtube.com/watch?v=MpYIELZmo9Y 白人女性ではこれがいい。 [Peggy Lee-same]53.5.1 (画像4) http:…

アル中病棟入院記168

(人名はすべて仮名です) ・4月9日(金)晴れ 「午前中は朝の会の後レクリエーションで大泉寺へ。境内で休憩をとり、組を健脚組とゆっくり組に分ける(註)。健脚組は坂道コースを、ゆっくり組は来たルート(平坦路)をゆっくりと歩き、ゴールはほぼ一緒になる。松…

文学史知ったかぶり(1)

ドイツの文学史家エーリヒ・アウエルバッハ(1892-1957)の代表的著作「ミメーシス」46は邦訳では「ヨーロッパ文学における現実描写」と副題がつけられているように(ミメーシスとは『表象』という意味)邦訳で上下巻1000ページを20章に分けて、ヨーロッパ文学の…

アル中病棟入院記167

(人名はすべて仮名です) ・4月8日(木)晴れ (前回から続く) 「AAの人たちが帰ると、後かたづけも手早く済ませてみんな喫煙室に殺到、今日の灰皿掃除の当番は梅崎さんだから午後一時の掃除はいいタイミングでかたづいたが、いつもは晩八時の灰皿掃除は講演会が…

いやな夢(ミュージカル挿入歌'39)

地味ながらアメリカ本国では人気曲。あの「クールの誕生」でも、 [Miles Davis Nonet ft.Kenny Hagood-same]50.3.9 (画像4) http://m.youtube.com/watch?v=YpX-_sSQYb0 「クールの誕生」の影響は大きく、 [Bill Triglia Septet(Tony Fruscella)-same]52.2.16…

アル中病棟入院記166

(人名はすべて仮名です) ・4月8日(木)晴れ (前回から続く) 「言い出しっぺながら飽きてきたのでこの話題ももういいか、元はと言えば勝浦くんが不安や不満、犯人がどうのだの言い始めたのを逸らすためのおふざけで、それはどうやら功を奏したし、と思っていた…

クロード・シモン「フランドルへの道」1960

クロード・シモン(1913-2005)は第二次大戦後のフランス小説家で、85年にノーベル文学賞受賞。裕福な軍人家系に育つも父は第一大戦で戦死、作者自身も第二次大戦で捕虜から脱走兵となり地下活動参加の過酷な戦争体験を経て、戦時中完成した処女作「ぺてん師」…