人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

詩と童話・その他創作

偽ムーミン谷のレストラン・改(35)

ムーミン谷経済学講座番外編(続)。 一説によると、イナゴタワー(前回詳述)を形成するイナゴ投資家には、以下のような種類があるといいます。 ●高速イナゴ : 電光石火のようなスピードを持ち味とするイナゴ。銘柄に関する材料となる情報が出るやいなや内容の…

偽ムーミン谷のレストラン・改(34)

ムーミン谷経済学講座番外編。 イナゴ投資家、または単にイナゴと証券業界から呼ばれる一部の個人投資家たちはテレビやネット、SNSの情報から素早く有価証券を売買をし、その回転売価によってタワー状の株価チャートを引き起こします。その株価急騰・急落の…

偽ムーミン谷のレストラン・改(33)

スナフキンは現地での生活必需品はすべて現地調達するつもりでしたので、ナップサックには役にも立たない文庫本(『銀河鉄道の夜』と『赤頭巾ちゃん気をつけて』)や最小限の下着、筆記用具くらいしか入れてきていませんでした。今やスナフキンは買い物もまま…

偽ムーミン谷のレストラン・改(32)

肩身が狭いな、とジャコウネズミ博士が言いました、馬鹿担当のムーパパが消えると、われわれのうちの誰かに道化の役割が回ってくるのではないか。やれやれだな。 ああ勘弁願いたいね、とヘムレンさん。これも順繰りだから仕方ないが、少なくとも年内だけでも…

偽ムーミン谷のレストラン・改(31)

第4章。 前回は爬虫類や哺乳動物の陰茎や睾丸の話で始終してしまい非常に遺憾だ、とムーミンパパは壁に手をついてうつむきました。慙愧の至りだ。反省、いや猛省。どうせ駄弁るなら魚卵や卵巣の話の方が良かった。私は食べたことはないが、フグの卵巣などあ…

偽ムーミン谷のレストラン・改(30)

だがこれは喰えるものなら家畜の睾丸すら無駄にしない、というより土着的な生殖信仰のようなものが背景にあると思えるのだ、とムーミンパパはしたり顔で言いました。生殖力は生殖器それ自体に宿る、という素朴な着目だな。これは洋の東西問わず、おそらく人…

偽ムーミン谷のレストラン・改(29)

ロッキー・マウンテン・オイスターとは、主に雄牛の睾丸を食材とする料理です。豚や羊の睾丸を使った料理もこの名で呼ばれることがあります。睾丸の皮を剥いて、小麦粉と塩胡椒をまぶして油で揚げるのが代表的な調理法です。揚げる前に叩いて伸ばす調理方法…

偽ムーミン谷のレストラン・改(28)

もとよりレストランがどういうものかなど私もロッドユールもフレドリクソンさんも知るものか、とムーミンパパ(当時ムーミン)は開き直りました。披露宴ならレストランねと言い出したのは花嫁たちではないか。ムーミン谷にはレストランなどないから私とロッド…

偽ムーミン谷のレストラン・改(27)

いくら何でもそれはないでしょう!と鼻持ちならない気取り屋のスノークが割って入りました。セックスだって手を使います。動物ならともかく、われわれが手を使わないでセックスをすれば文字通り手抜きと言われても仕方ない。そうではないですか? きみは独身…

偽ムーミン谷のレストラン・改(26)

この豚小屋は何よ、と先代フローレン、つまり現在のムーミンママは吐き捨てました。豚小屋じゃなければ強制収容所、いえ豚小屋だって収容所だってここよりはずっと衛生的だし、見栄えだっていいわ。 ほほう、と先代ムーミン、つまり現在のムーミンパパはせせ…

偽ムーミン谷のレストラン・改(25)

確かにムーミン谷にはレストランはない、とムーミンパパは言いました。ただし昔は存在したのだ。正確にはレストランを模したものが存在した、と言うべきかな。 どういうこと?と偽ムーミンが訊きました。いちいち注記しませんが、偽ムーミンはムーミンの意に…

偽ムーミン谷のレストラン・改(24)

レストランの中に見える顔ぶれは(もっともまだ食事は開始されておらず、何のためにこの建物に集まっているのかは--もちろん食事のためだとしても、まだ料理が出されておらず、従ってレストランだと確証できないうちはスナフキンにはわかりませんでしたが)、…

偽ムーミン谷のレストラン・改(23)

……だとさ、とジャコウネズミ博士は哄笑しました。どこがおかしいかね、と、ヘムレンさん。言うまでもなかろう、いったいムーミン谷とそれがどう関係あるのかね?それはつまり、と博士、私たちは自分の体長すら知らないのだ。夜寝る時にどれほどの身長がある…

偽ムーミン谷のレストラン・改(22)

ムーミン谷経済学講座。 インフラ(英語: infrastructure)とは「下から支える」「下部構造」を指す観念語で、国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設を指します。公共福祉施設であり、民間事業として成立しにくいために中央政府や公共機関が確保建設…

偽ムーミン谷のレストラン・改(21)

第3章。 最初、人びとはスナフキンの存在に気がつきませんでした。あるいは、気がつかないふりをしていました。気づくとはすなわちその存在を認めることであり、認めてしまえばそれは間違いだ、認識の違いだと言い張ってもあとの祭りです。 ですが認識の違い…

偽ムーミン谷のレストラン(20)

前回抹消。 気のいいトゥーティッキさんは氷のようなモラン、気の弱いフィリフヨンカと相席して話に花を咲かせていました。3人は魔女という属性が共通点なだけに、もしパーティを組んだら魔力に特化した無敵のチームなのではないかと思われました。いや、す…

偽ムーミン谷のレストラン・改(19)

前回の続き。 気のいいトゥーティッキさんは氷のようなモラン、気の弱いフィリフヨンカと相席させられて話題に困っていました。3人は魔女という属性だけが共通点ですが、もしパーティを組んだら足を引っ張りあって即全滅なのではないかと思われました。いや…

偽ムーミン谷のレストラン・改(18)

というのは、スノークには時たま熱弁をふるう癖があり、それは彼にとって相手に対する精一杯の誠意だったはずなのですが一向空回りするばかりで、誰の心にもさっぱり響かないのは何故だろう、としばしば悩みになって跳ね返ってくるばかりなのでした。これが…

偽ムーミン谷のレストラン・改(17)

つけ焼き刃ではありますがまずは僭越ながらひと言、とスノーク、良い作法は身だしなみやお行儀の良さと同じように、大切なこととわきまえていなければいけません。不幸にして、いろいろなもの事の標準が混乱している昨今、作法がないがしろにされがちである…

偽ムーミン谷のレストラン・改(16)

さて、今ムーミン谷のレストランには、いる人もいない人も含めて主要なムーミン谷住民ほぼ全員が顔を揃えていました。すなわち、 ムーミンパパ、ムーミンママ、ムーミン/スノーク、フローレン/ヘムレンさん、ジャコウネズミ博士/ヘムル署長、スティンキー/ミ…

偽ムーミン谷のレストラン・改(15)

さて、今ムーミン谷のレストランには、いる人もいない人も含めて主要なムーミン谷住民ほぼ全員が顔を揃えていました。すなわち、 ムーミンパパ、ムーミンママ、ムーミン/スノーク、フローレン/ヘムレンさん、ジャコウネズミ博士/ヘムル署長、スティンキー/ミ…

偽ムーミン谷のレストラン・改(14)

案外手間はかからなかったようだな、とムーミンパパはレストランのドアの前に立ち、ムーミンとムーミンママを振りかえりました。ムーミン、実は偽ムーミンはムーミン家の居間の会話中、危険を察してトイレに立ち、本物のムーミンと入れ替わっていたのです。 …

偽ムーミン谷のレストラン・改(13)

ムーミンは退屈になってきたので考えごとでもしてヒマつぶししようと思いつきました。たとえば国勢調査などの統計調査で、回答者が年齢や生まれ年を、キリのいい数字(典型的には下1桁が0や5である数字)や、文化的に好まれる思える数字(よくある例ではサバを…

偽ムーミン谷のレストラン・改(12)

スナフキンの遺体は濡れた新聞紙を何重にも重ねて隙間なく包まれていました。乾いた新聞紙は意外なほどに丈夫で破れにくいものですが、濡れた新聞紙ほど破れやすい包み紙はないことからも遺体はまず乾いた新聞紙で包まれて、その後にまんべんなく水浸しにさ…

偽ムーミン谷のレストラン・改(11)

第2章。 従者は伝令の役目を果たして引き上げて行きました。戸口まで見送ったのは好奇心旺盛なくせに気取り屋なので谷の陰口を一身に集めているスノークで、ぼんくら揃いでは例外ない谷の住人であるからにはスノークもまたぼんくらのひとりでしたが、だから…

偽ムーミン谷のレストラン・改(10)

そもそもレストランとは何だろうか、とムーミンパパは問いかけました。てかそもそも、レストランの何たるかをすら知らないわれわれがレストランにおもむくことにいったい何の意義があるだろうか。もちろん私には皆さんに対してどのような強制力も有さないが…

偽ムーミン谷のレストラン・改(9)

その頃ムーミンは全身拘束具を科せられ手も足も出ない状況にありました。幸い横たわった姿勢で、四肢もなんとか伸ばせますので、拘束というよりは一種のサナギに包まれているような状態です。たぶんこれがナンバーキーなんだろうな、という数字の文字盤が手…

偽ムーミン谷のレストラン・改(8)

スナフキンが着いたのは、夜も更けてからのことでした。谷は深い雪の中に横たわっていました。谷の両側にそびえるはずの山はまったく見えず、霧と夜の闇に包まれていました。街の中心地を示すかすかな灯りさえなく、スナフキンは長いあいだ国道から谷に通じ…

偽ムーミン谷のレストラン・改(7)

巨大ブタクサ(ジャイアント・ホグウィード, Giant Hogweed)は光毒性の物質を含み、多くの地域で有害雑草として知られるセリ科の多年生植物で、丈夫で光沢のある緑色の茎には所々に赤黒い斑点があり、葉柄の赤い輪紋には頑丈な毛が生えています。この茎は成長…

偽ムーミン谷のレストラン・改(6)

ムーミン谷の人びとにはいわゆる思考力はなく、思考と見られるものの実態はバクスター効果に極めて近似していました。バクスター効果(Backster effect)とはアメリカ合衆国の技術者クリーヴ・バクスターが1966年から行なっていた実験中に発見した現象で、植物…