人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

映画

映画日記2018年5月26日~28日/ウィリアム・A・ウェルマン (1896-1975)監督作品(6)

監督作品82作のうち18作だけですが、現在DVDで観ることができる主要なウィリアム・A・ウェルマン監督作品は今回の3作でほぼ観直すことができたと思います。初期の洗練された都会的作風で小津安二郎、清水宏ら戦前の松竹の当時若手の監督たちにもエルンスト・…

映画日記2018年5月23日~25日/ウィリアム・A・ウェルマン (1896-1975)監督作品(5)

フランソワ・トリフォーはアルフレッド・ヒッチコックの映画を論じて、D・W・グリフィスが'10年代に基礎を建て、ジョン・フォードやハワード・ホークスが'40年代までの作品で達成した映画のカット割り/編集による映像方法を「古典的モンタージュ」としてそれ…

映画日記2018年5月20日~22日/ウィリアム・A・ウェルマン (1896-1975)監督作品(4)

手放しで素晴らしい映画と褒め上げお勧めできる作品がこうも揃うとかえって表現に困るもので、今回のウィリアム・A・ウェルマン作品『牛泥棒』'43、『西部の王者』'44、『G・I・ジョウ』'45の3作は、前回の冒険ミステリー映画の会心作『ボー・ジェスト』'39…

映画日記2018年5月17日~19日/ウィリアム・A・ウェルマン (1896-1975)監督作品(3)

映画に限ったことではないでしょうが、詳しい人はやたらと詳しく、知らない人はほとんど知らないジャンルというのはあるもので、ウィリアム・A・ウェルマンがどのくらい今でも知られているのかわかりませんが、映画に相応の関心がないと引っかかってこない監…

映画日記2018年5月14日~16日/ウィリアム・A・ウェルマン (1896-1975)監督作品(2)

第1回の前回はアメリカ映画史の特筆重要作品ばかりが並びましたが、非常に詳細な英語版ウィキペディアのウィリアム・A・ウェルマンの項目(各作品解説を入れれば単行本1冊の分量は裕にあるでしょう)でも「イノヴェイターとしてのキャリア」という項目が立てら…

映画日記2018年5月9日・10日/イエジー・スコリモフスキ(1938-)の監督作品(5)

ポーランド出身の映画監督、イエジー・スコリモフスキ監督作品感想文も今回の近作2作でひと区切り、長編がこれまで17作、そのうち日本公開作品が12作ですからこの都度取り上げた10作(『ライトシップ』'85、『イレブン・ミニッツ』'2005以外の日本公開作)でそ…

映画日記2018年5月7日・8日/イエジー・スコリモフスキ(1938-)の監督作品(4)

人気作『早春』'70の後スコリモフスキは『ロリータ』の亡命ロシア作家ウラジミール・ナボコフの初期作品の映画化『キング、クイーン、そしてジャック (King, Queen, Knave)』(西ドイツ=アメリカ1972)のオファーを受けましたが批評・興行成績とも不発に終わり…

映画日記2018年5月5日・6日/イエジー・スコリモフスキ(1938-)の監督作品(3)

スコリモフスキは60年間に監督した長編劇映画17作のうち12作が日本公開され(そのほとんどが近年10年ですが)、日本未公開作品5作はスコリモフスキ自身も失敗作としているようなのでこだわる必要はなさそうです。残り5作はまだ未DVD化作品ですがひとまず日本で…

映画日記2018年5月3日・4日/イエジー・スコリモフスキ(1938-)の監督作品(2)

ポーランドから出て国際的監督となったロマン・ポランスキー(1933-)と並んで現役ポーランド映画最年長監督のひとり、イエジー・スコリモフスキ(1938-)の現在までの全長編作品は次の17作になります。『』の12作が日本劇場公開作品、「」の5作が日本未公開、ま…

映画日記2018年5月1日・2日/イエジー・スコリモフスキ(1938-)の監督作品(1)

ポーランド出身で、アンジェイ・ワイダ(1926-2016、『灰とダイヤモンド』'58ほか)やアンジェイ・ムンク(1929-1961、『エロイカ』'57ほか)に国立ウッチ映画大学で学び、同大学在学中からワイダの『夜の終りに』'60の共同脚本と出演、ロマン・ポランスキー(193…

映画日記2018年4月28日~30日/ジャン・ギャバン(1904-1976)主演作品30本(10)完

いよいよコスミック出版の廉価版10枚組DVDボックス『フランス映画パーフェクトコレクション~ジャン・ギャバンの世界』第1集~第3集(各巻1,800円)収録作品全30作年代順感想文の最終回になる今回は、イタリア=フランス合作の日本未公開作品『危険な娘』'52(…

映画日記2018年4月25日~27日/ジャン・ギャバン(1904-1976)主演作品30本(9)

余すところ今回と次回であと6作に迫った『ジャン・ギャバンの世界』第1集~第3集収録作品全30作年代順連続感想文ですが、今回は第40作『夜は我がもの』'51(LPC/エクレア・ジャーナル/ピエール・ゲラン・プロダクション製作、ジョルジュ・ラコンブ監督作品=…

映画日記2018年4月22日~24日/ジャン・ギャバン(1904-1976)主演作品30本(8)

コスミック出版刊の書籍扱い10枚組廉価版DVDボックス『フランス映画パーフェクトコレクション~ジャン・ギャバンの世界』第1集~第3集(2016年12月~2017年12月発売・各巻1,800円)に収録されているジャン・ギャバンの主演(出演)作品はパブリック・ドメインに…

映画日記2018年4月19日~21日/ジャン・ギャバン(1904-1976)主演作品30本(7)

ジャン・ギャバンのアメリカ亡命はハリウッド映画の主演作でギャバン出演作第32作『夜霧の港』'42(20世紀フォックス製作配給、前回紹介)、第33作『逃亡者』'44(ユニヴァーサル製作配給)を生みましたがアメリカでの映画出演はその2作きりで、ギャバンは終戦後…

映画日記2018年4月16日~18日/ジャン・ギャバン(1904-1976)主演作品30本(6)付「Sight and Sound」誌歴代世界映画ベストテン・リスト

ジャン・ギャバンは第二次世界大戦のドイツ軍のフランス侵攻から逃れて'41年にはアメリカに渡り、ハリウッドに迎えられました。イギリス経由でアメリカに亡命したルネ・クレールを始めジャン・ルノワール、ジュリアン・デュヴィヴィエら多くの映画人が親ドイ…

映画日記2018年4月13日~15日/ジャン・ギャバン(1904-1976)主演作品30本(5)

この連載映画感想文はコスミック出版刊の書籍扱い廉価版10枚組DVDボックス『フランス映画パーフェクトコレクション~ジャン・ギャバンの世界』第1集~第3集(2016年12月~2017年12月発売、各巻1,800円)収録作品30作を作品年代順に取り上げたもので、これまで…

映画日記2018年4月10日~12日/ジャン・ギャバン(1904-1976)主演作品30本(4)

ジャン・ギャバン出演作の第24作~第26作になる今回の3作は前回最後の『望郷』(本国公開1937年1月28日、日本公開1939年2月)と本国同年公開の作品で、『望郷』と6月公開の『大いなる幻影』では半年も離れていませんが、今回以降はすべて日本では戦後公開(また…

映画日記2018年4月7日~9日/ジャン・ギャバン(1904-1976)主演作品30本(3)

ようやくジャン・ギャバンの名前がクレジットのトップで一枚看板になったのが今回の感想文の3作で、ギャバン出演長編映画第21作~第23作に当たる『我等の仲間』『どん底』『望郷』です。『望郷』以降の作品は戦時下の映画統制で外国映画の輸入上映禁止の時期…

映画日記2018年4月4日~6日/ジャン・ギャバン(1904-1976)主演作品30本(2)

コスミック出版刊行の書籍扱い10枚組廉価版DVDボックス『フランス映画パーフェクトコレクション~ジャン・ギャバンの世界』第1集~第3集(2016年12月~2017年12月発売)の収録作品30作をぜんぶ年代順に観直してしまおうという第2回は、前回のギャバン出演長編…

映画日記2018年4月1日~3日/ジャン・ギャバン(1904-1976)主演作品30本(1)

今回からの映画日記は10回に渡って20世紀フランス映画を代表する名優、ジャン・ギャバン(1904-1976)の主演作品30作を続けて観ていきたいと思います。というのは書籍扱い廉価版DVDボックス(西部劇、戦争映画、ミュージカル映画を主に'53年以前のパブリック・…

映画日記2018年3月29日~31日/エルンスト・ルビッチ(1892-1947)のハリウッド作品(3)'40年代から3作

エルンスト・ルビッチ(1892-1947)監督作品から9作観直しての感想文も今回が最後になります。ルビッチのハリウッド進出後の作品のうち'20年代、'30年代、'40年代から3本ずつ、一応代表作と言えるものが揃ってはいますが、'20年代から3本はあれでいいとして'30…

映画日記2018年3月26日~28日/エルンスト・ルビッチ(1892-1947)のハリウッド作品(2)'30年代から3作

今回ご紹介する作品のひとつの日本盤DVDの解説書はこんな書き出しから始まっていました。改行もそのままに引用します。 「見るたびに、気分がうきうきする。 見るたびに、笑いが噛み殺せなくなる。 ルビッチの映画はほとんどみなそうだが、『君とひととき』(…

映画日記2018年3月20日~22日/ジョセフ・フォン・スタンバーグ(1894-1969)の映画(3)後期ディートリッヒ主演作以後'32年~'35年

3作品ずつ3回、9作でスタンバーグの回が終わるのは何とも残念な気がします。今回観直すことができなかった作品はいずれまた取り上げるとして、スタンバーグの映画は以下の長編24作、短編1作になります。邦題を記したものが日本劇場公開、または映像ソフト・…

映画日記2018年3月17日~19日/ジョセフ・フォン・スタンバーグ(1894-1969)の映画(2)マレーネ・ディートリッヒ主演作'30年~'31年

今回と次回は'35年までのスタンバーグのトーキー作品6作をご紹介します。スタンバーグの全盛期はドイツに招かれて撮ったトーキー第2作『嘆きの天使』'30からトーキー第9作『西班牙狂想曲』(原題は『The Devil Is a Woman』というすごいタイトル)に至る7作の…

映画日記2018年3月11日~13日/溝口健二(1898-1956)のトーキー作品(11)最終回

昭和31年5月に単球性白血病で入院(本人告知はされず)、8月に逝去するまで晩年2年の溝口健二の栄誉は高く表彰されたものでした。『近松物語』は東京映画記者会ブルーリボン賞(監督賞)を受賞し、昭和31年は1月から大映東京撮影所で香港のショウ・ブラザースと…

映画日記2018年3月8日~10日/溝口健二(1898-1956)のトーキー作品(10)1954年の3作品

今回は戦後の溝口映画最大の問題作『山椒大夫』から『噂の女』『近松物語』までの3作の回になりました。この3作は日本再軍備の年昭和29年の3月、6月、11月に公開され、この年のキネマ旬報ベストテンは第1位が『二十四の瞳』木下恵介、第2位も木下の『女の園…

映画日記2018年3月5日~7日/溝口健二(1898-1956)のトーキー作品(9)溝口映画のビッグバン

ついに泣く子も黙る溝口映画の傑作名作連発時代が今回の『西鶴一代女』から始まります。溝口は黒澤明の『羅生門』'50が公開翌年にイタリアのヴェネツィア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)、アメリカのアカデミー賞特別賞(外国映画賞)を受賞したのに奮起し、松…

映画日記2018年3月2日~4日/溝口健二(1898-1956)のトーキー作品(8)没落旧家三部作

'50年代に入ってからの溝口映画は観ることの容易な、上映やBS放映(映画枠の多かったかつては地上波でもよく放映されていました)も多い作品がほとんどなので、1回3作ずつの紹介にします。というか前回まで1回2作ずつだったので毎回長すぎてしまったばかりか時…

映画日記2018年2月28日~3月1日/溝口健二(1898-1956)のトーキー作品(7)敗戦後の模索期2

前回までで12作、今回さらに2作を観てようやくトーキー以降の溝口健二監督作品26作連続視聴の折り返し地点ですが、実は今回もまだちょっと苦しい二本立てで、激しくどぎつい売春婦映画の『夜の女たち』'48と、明治の社会運動家で婦人解放運動の先駆者であり…

映画日記2018年2月26日~27日/溝口健二(1898-1956)のトーキー作品(6)敗戦後の模索期1

溝口健二の戦後最初の作品は新藤兼人、小津安二郎専属脚本家の野田高梧の共作オリジナル・シナリオによる女権主張・民主主義促進映画『女性の勝利』(松竹、昭和21年4月18日公開)で、「自由主義者の評論家山岡(徳大寺伸)は終戦で釈放され、かつての恋人で弁護…