人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

アル中病棟入院記204

(人名はすべて仮名です) ・4月27日(火)曇りのち雨 (前回から続く) 「今日この病棟に移ってきた四人は本来ならこの病棟に来るべきではないワケありの人たちだった。篠田くんは統合失調症で二年間の長期入院を宣告されているから第一病棟に行くべきだし、以前…

偽ムーミン谷のレストラン(14)

・前回までのあらすじ― ムーミンパパは新規開店したムーミン谷のレストランで、コース料理最初のスープをまず息子から飲むように勧める。レストランは物見高いムーミン谷の人びとでごったがえしていた。だがその息子ムーミンは、実は食前にトイレに行ったふ…

文学史知ったかぶり(11)

自然主義小説はヨーロッパ文学の発明で、発祥国フランスでは1865~1893年までのほぼ30年間に興隆から衰退までをたどります。 一方アメリカや日本はヨーロッパの文芸思潮の輸入国でした。日本の自然主義小説は1890年代から試作があり、1910年までには日本流の…

アル中病棟入院記203

(人名はすべて仮名です) ・4月27日(火)曇りのち雨 「昨日は夕方に、グループホームの空き待ちで半年間も入院していた木島さんも福祉ケースワーカーの付き添いで退院していった。急な決定らしく朝の会でもあいさつはなかったし、木島さんが退院するからといっ…

再びブログ余談

先週『ブログ余談』と題して、最近このブログはこういう題目を、こんなローテーションでやってますというメニューを載せてみた。訪問閲覧してくださる方々への案内にもなるし、自分でも確認しておきたかったのだ。まず一日二本を午前零時に更新、分量は携帯…

偽ムーミン谷のレストラン(13)

ところでママ、スープが運ばれてきてからもうどのくらい経ったかな?三分くらいだと思うよ、と偽ムーミンはスープ皿に触れて見当をつけました。 誰もお前に訊いておらん、とムーミンパパは冷たくはねつけたので、あのおやじまだ拗ねてやがる、と周囲の反感を…

アル中病棟入院記202

(人名はすべて仮名です) ・4月26日(月)晴れ (前回から続く) 「午前中は酒歴発表で、今日の発表者は梅崎さんと滝口さん。発表が同日だということは入院も同期だったということだ。滝口さんは小学生のお嬢さんたちもいるのでゴールデンウィーク前に退院を早め…

偽ムーミン谷のレストラン(12)

ムーミンパパはさりげなくムーミン、その実は偽ムーミンを迎えましたが、ついつい息子のために椅子を引いてしまうという卑屈な行為をしてしまい、自分から屈辱感を招いてしまいました。ムーミン谷の慣習ではムーミン谷のムーミン族は家長または世帯主の逝去…

アル中病棟入院記201

(人名はすべて仮名です) ・4月25日(月)晴れ 「降谷さんはわれわれのテーブルから注目されていると気づくと俄然行動がエスカレートしてきたようだった。つまりこちらのテーブルの様子にも関心を持ったようで、昨夜も突然会話に割り込んできて謎の発言を残して…

偽ムーミン谷のレストラン(11)

第二章。 [場所] ・ムーミン谷に新規開店したレストラン [時間] ・早めのディナータイム [登場人物] ・ムーミン…ムーミン族を象徴する当代ムーミン。基本性格はぼんくらで他人に搾取されるタイプ。 ・ムーミンパパ…先代ムーミンで私生児に生まれ孤児院で育つ…

アル中病棟入院記200

(人名はすべて仮名です) ・4月25日(日)晴れ (前回から続く) 「近藤さんの飲酒昏倒事件はともかく、降谷さんの駐車場シェスタ事件と三田さんのウォシュレット事件に滝口さんは爆笑。一応本人たちに聞こえたら悪いのでひそひそ話だが、梅崎さんも勝浦くんも大…

ブログ余談

このブログのように毎日更新、それも二本で携帯サイトでの制限文字数1000文字目一杯という更新自体を目的にやっていると、話題には困らないが方向性には困る。長い病気療養中の作業療法と言えば聞こえはいいが(いいか?)、病気の性質上なるべく実生活での人…

偽ムーミン谷のレストラン(10)

ムーミンパパはさりげなく家族に告げただけですが、そのひと言でスノークとフローレン兄妹もぎょっとムーミン一家を見つめ、ヘムレンさんとジャコウネズミ博士もムーミン一家を学術的に見つめ、近親相姦夫婦のトフスランとビフスランも双子だからそっくりな…

アル中病棟入院記199

(人名はすべて仮名です) ・4月24日(土)晴れ (前回から続く) 「4.降谷さんの『奇行』。良い天候なのでデイルームの南の窓から中里さんが外を眺めていると、すぐ前の駐車場に女性が伸びているのに気づいた。通りかかった梅崎さんにあれは一体どういうことだろ…

偽ムーミン谷のレストラン(9)

トイレだよ、と偽ムーミンはやや低い声で返答しました。今回は体ごとではなく精神だけを遠距離交換したので肉体は本物のムーミンですから、他人の体は発声ひとつとってもすぐには扱いづらいのです。 本当はいつものように肉体ごと、もっともトロールの体を肉…

偽ムーミン谷のレストラン(8)

偽ムーミンがテーブルに戻ると意外にもレストランはごったがえしており、スノークとフローレンは兄妹で同じテーブルに、ヘムレンさんとジャコウネズミ博士は学者で同じテーブルに、近親相姦夫婦トフスランとビフスランは双子で同じテーブルに、ヘムル署長と…

アル中病棟入院記198

(人名はすべて仮名です) ・4月24日(土)晴れ 「体温35.8、脈拍72、血圧(上)99(下)66、体重・前日同。今日の出来事は1.金田さんの退院、2.近藤さん突然第三病棟に移室、3.金子さん=アルコール科で初老男性が第三病棟から第二病棟の一床部屋に移室、4.降谷さん…

偽ムーミン谷のレストラン(7)

ムーミンはムーミンパパとムーミンママが宙の一点を見つめて硬直しているのには気づかず、当然いるはずはないスノークがつられて見つめているのも、つられてフローレンも見つめているのも、つられてヘムレンさんも見つめているのも、つられてヘムル署長も見…

『鎖を離れたプロメテ』アンドレ・ジッド(4)

ノーベル文学賞作家アンドレ・ジッド(1869~1951)は生前に名声を存分に謳歌した人でした。日本でも第二次大戦前に同時に二社から翻訳版全集が刊行され、終戦間もない昭和20年代にも二種が刊行されています。しかし没後に出た角川書店版全集は全文業から三分…

アル中病棟入院記197

(人名はすべて仮名です) ・4月23日(金)雨のち曇り 「体温36.5、脈拍60、血圧(上)93(下)66、着衣体重60.9、裸体59.7。今日は日直当番。清水くん朝食後に退院。仕事に復帰する予定は当分ないらしい。あいつ毎日奥さんと家にこもって大丈夫かな、と松本さんも勝…

偽ムーミン谷のレストラン(6)

ではご主人さまはスペアリブ、奥さまとお坊ちゃまはチキンソテーをメインに、すべてフルコースでよろしいですね、と、給仕。 お坊ちゃまですって、笑っちゃうわよねー。やめなさいミイ、と姉のミムラがたしなめます。だーってみんな笑いをこらえているじゃな…

偽ムーミン谷のレストラン(5)

注文を終えて安堵した様子の両親にムーミンは自分も何か言おうとしましたが、その時ふと気づくと、ムーミンパパもムーミンママもあらぬところを凝視しているので、つい忘れて自分もそこに見入りました。 ムーミンパパは気を取り直し、そうだねママ、それにム…

頭の中の映画5/フェリーニ、アントニオーニ

アラン・レネの『去年マリエンバートで』(61年・仏)とフェデリコ・フェリーニ『81/2』(63年・伊)の比較からさらに浮かぶのは、「悪意」の介在です。『マリエンバート』はおそらくレネ自身の資質ではありませんが、脚本のロブ=グリエが映画に非常に挑発的な…

アル中病棟入院記196

(人名はすべて仮名です) ・4月22日(木)雨 (前回から続く) 「午後は環境整備だが、今週は掃除機当番に当っているので、大型掃除機の扱いは面倒だが、マイペースでできる仕事なのはありがたい。数人ひと組で何かやると、親しい同士ならともかく、かならず内輪…

偽ムーミン谷のレストラン(4)

ムーミンパパは給仕からメニューの仕組みを聞き出すと、注文が決るまで下がってよろしいと紳士的な態度でしたので、ムーミンママも安心して凶器から手を離しました。ごめんなさいあなた、私難しくてちゃんと聞いてなかったの。 ぼくも、とムーミン。やれやれ…

文学史知ったかぶり(10)

自然主義小説の発祥国フランスでは、1865年のゴンクール兄弟『ジェルミニー・ラセルトゥー』をもっとも早い作例とすると、エミール・ゾラ「ルーゴン=マッカール双書」(1871~1893)の、特に『居酒屋』~『大地』に当る1877~87年が自然主義小説の最盛期と言…

アル中病棟入院記195

(人名はすべて仮名です) ・4月22日(木)雨 「昨日の全体会で席替えがあり河出は別のテーブルに移ったのでうちのテーブルは全員喜ぶ。替りに退院を間近に控えている清水くんが移ってきた。清水くんは散歩仲間には加わらず寝ていることが多いが、雑談には普段か…

偽ムーミン谷のレストラン(3)

…気まずい沈黙が流れました。無礼者、それがムーミン族の長たる私への答えか!とテーブルの上に片足をあげて恫喝の態度に出かねないのがムーミンパパの性格です。能もないのにブライドだけは高いんだから、この野郎と、ムーミンママはエプロンの裏に隠したフ…

ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン(アーヴィング・バーリン'32)

作者自身は出来に自信がなく発表が遅れたというが、結果的には名唱名演溢れる大スタンダードとなる。女性歌手による代表的な歌唱を上げる。 [Lee Wiley-How Deep Is The Ocean]50.12.12(画像1) http://m.youtube.com/watch?v=X7xM7aoXzfA [Billie Holiday-sa…

アル中病棟入院記194

(人名はすべて仮名です) ・4月21日(水)晴れ 「朝食前に滝口さんに村上春樹『1Q84』第三巻を返却し、朝食の席でおたがいの感想を話す。けっこう謎が残るけど主人公たち側にはあれ以上わからないから仕方ないのかな。私は気になりませんでしたけど。第三巻はか…