人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

終章-眠れる森1・後編(連作32)

(連作「ファミリー・アフェア」その32) 「きみの好きなところを100上げろと言われたら101は答えられるけど」とぼくは彼女と笑った。「私はひと言で言える」と彼女は言った、「ぜんぶ」。 だがぼくはこうも言った。こうしたことはおたがいがあってのことだか…

(45d)スタン・ケントン(p,ldr)

Stan Kenton(1912-1979,piano,Big Band Leader)。 このジャズ連載はどのアーティストでも各種の文献を照合して正確を期しているが、ケントンくらい文献によってデータがまちまちな例はなかった。永年の権利関係の移動もあってかデータの混乱がひどい。楽団員…

終章-眠れる森1・前編(連作31)

(連作「ファミリー・アフェア」その31) 終章のタイトルはぼくが考えたものではない。彼女が考えたものだ。彼女-Nさんはぼくが入院前に書き上げていた14章28回分を読み終えると、 「私とのことは美しく書いてね。タイトルは『眠れる森』がいいわ」 と言った…

(45c)スタン・ケントン(p,ldr)

Stan Kenton(1912-1979,piano,Big Band Leader)。 前回の3作の中間にうっかり落した重要作がある。53年の'Sketches On Standards'(画像1)がそれで、編曲は主にビル・ラッソ。コンテ・カンドリ(トランペット)、フランク・ロソリーノ(トロンボーン)、リー・コ…

2010年4月1日の朝・後編(連作30)

(連作「ファミリー・アフェア」その30) 「Kくんのお世辞は10割増しですから」と、ぼく。「大体OさんがぼくとKくんを同い年だと言い出すから」「何よ、私が悪いって言うの?」「本当に同じ年なんですか?」とNさん。 「Nさんこそ怪しい。大阪万博に行っ…

(45b)スタン・ケントン(p,ldr)

Stan Kenton(1912-1979,piano,Big Band Leader)。 「リズムの芸術」'Artistry In Rhythm'はケントン楽団のテーマ曲であり、40年代後半には本人も批評家もバンドの音楽性を「プログレッシヴ・ジャズ」と呼ぶようになる。後年ロックで「プログレッシヴ・ロック…

2010年4月1日の朝・前編(連作29)

(連作「ファミリー・アフェア」その29) …今日はD先生の診察日。薬の自己管理と自助グループ参加の時期到来。薬は一日単位(睡眠導入剤は別)、心電図はMさん、Aさんと三人呼ばれる。15日のM市断酒会はMさんとYさんがリーダーで行くことになる。ぼくも記…

(45a)スタン・ケントン(p,ldr)

Stan Kenton(1912-1979,piano,Big Band Leader)。 アメリカ本国(または諸外国)と日本の評価・人気に落差のあるミュージシャンは多いが、ジャンルで言えばクラシックやロック、その他ポピュラー音楽全般でもジャズほど好みの差が現れている分野はないのではな…

通院日記・3月11日月曜・晴れ

いま歯科の待合室、珍しく待たされているところだ。昨日は3月10日で慣例ならば卒業式だが、日曜なのでどうなったのだろう?金曜まで繰りあげたらせわしないし、10日を過ぎても間が抜けている。昨年逝去したらしい父は昭和13年3月10日生れだから現存ならば75…

(44i)モダン・ジャズ・カルテット

The Modern Jazz Quartet:John Lewis(1920-2001,ldr,p),Milt Jackson(1923-1999,vibraphone),Percy Heath(1923-2005,bass),Connie Kay(1927-1994,drums)。MJQは活動23年満了の74年をもって解散するが、81年には再結成し落ちついたペースで活動を再開。コ…

危険な春・危険な石段

先日また近所の石段を登ってきた。先々週の通院日記にも書いたが、崖の上の神社に向かって無理矢理崖面に刻まれた石段で、傾斜は軽く60度はあり、しかも段ごとの奥行きが30センチもない。ほとんど爪先立ちでしっかり手すりを握って足元を確認して登らないと…

(44h)モダン・ジャズ・カルテット

The Modern Jazz Quartet:John Lewis(1920-2001,ldr,p),Milt Jackson(1923-1999,vibraphone),Percy Heath(1923-2005,bass),Connie Kay(1927-1994,drums)。今回もなんとかやっていた時期のMJQになる。前回まではほぼすべてのアルバムを年代順に紹介したが…

キメラ音楽としての演歌

お近くのホールで氷川きよしのツアーをご覧になった由、羨ましいですね。氷川さんは声質が明るくて気持良く聴けます。橋幸夫の『潮来笠』60が17歳のデビュー曲で、民謡系歌謡曲のアイドルでは氷川さんの先逹でした。民謡系歌謡曲には『○○節』などの第一次産…

(44g)モダン・ジャズ・カルテット

The Modern Jazz Quartet:John Lewis(1920-2001,ldr,p),Milt Jackson(1923-1999,vibraphone),Percy Heath(1923-2005,bass),Connie Kay(1927-1994,drums)。集大成ライヴ・アルバム「ヨーロピアン・コンサート」60.4と「MJQ&オーケストラ」60.6の二つの大…

次女との短い通話・後編(連作28)

(連作「ファミリー・アフェア」その28) やっぱりケーキ屋さんか、と次女が長女を呼びに行った間に苦笑した。長女の卒園式の発表は「お花屋さんかケーキ屋さん」だったが(もちろん「妹と」)「お花屋さんはやめた。虫が来るから」と考え直したのだ。次女もまだ…

(44f)モダン・ジャズ・カルテット

The Modern Jazz Quartet:John Lewis(1920-2001,ldr,p),Milt Jackson(1923-1999,vibraphone),Percy Heath(1923-2005,bass),Connie Kay(1927-1994,drums)。集大成ライヴ「ヨーロピアン・コンサート」で区切りをつけたMJQは念願のオーケストラ競演アルバム…

次女との短い通話・前編(連作27)

(連作「ファミリー・アフェア」その27) 「医師でも患者の自己分析を嫌がる人もいますが」 と訪問看護士のAさん。「100人医師がいれば100通りの診断がある、ってくらいで、メンタルはそういうものですよ」 「ぼくは双極性障害1型で1級相当、強迫性障害でシゾ…

(44e)モダン・ジャズ・カルテット

The Modern Jazz Quartet:John Lewis(1920-2001,ldr,p),Milt Jackson(1923-1999,vibraphone),Percy Heath(1923-2005,bass),Connie Kay(1927-1994,drums)。MJQほどの大物バンドになると作品数も多く隠れ名盤というものが出てくるものだが(ブルーベック・カ…

働かざる者たち・後編(連作26)

(連作「ファミリー・アフェア」その26) 結局一時間後に「さっきのは冗談」「えっ!」以来彼はぼくが一挙一動彼を馬鹿にしていると思うようになった。だから陰湿な目でぼくをつけ回すように睨んでくるのも仕方がない。ぼくは冗談にしていいことと悪いことの区…

(44d)モダン・ジャズ・カルテット

The Modern Jazz Quartet:John Lewis(1920-2001,ldr,p),Milt Jackson(1923-1999,vibraphone),Percy Heath(1923-2005,bass),Connie Kay(1927-1994,drums)。まずこのジャケットをご覧いただきたい。後にロックやフォークのアーティストがハッタリかます時に行…

働かざる者たち・前編(連作25)

(連作「ファミリー・アフェア」その25) 中学生の頃に読んだイギリスのカトリック作家の風刺小説の冒頭は、こんな警句で始まっていた。 「悪人でも人間には違いないのだから、へぼ詩人でも詩人には違うまい」 そして主人公のへぼ詩人が登場するのだが、この警…

(44c)モダン・ジャズ・カルテット

The Modern Jazz Quartet:John Lewis(1920-2001,ldr,p),Milt Jackson(1923-1999,vibraphone),Percy Heath(1923-2005,bass),Connie Kay(1927-1994,drums)。ジョン・ルイスをリーダーとしたこのバンドの革新性はビ・バップ以降のジャズ感覚でありながらアドリ…

通院日記3月4日・月曜・晴れ

晴れてきたのは午後になってからで、午前中は曇って外気も冷たかった。先週末の金・土は春先の気温で実に楽だったが、ぼくの記憶では80年代末に四月になって首都圏が雪に見舞われた年があった。なんで印象に残ったかというと当時好きだったプリンスに'Someti…

(44b)モダン・ジャズ・カルテット

The Modern Jazz Quartet:John Lewis(1920-2001,ldr,p),Milt Jackson(1923-1999,vibraphone),Percy Heath(1923-2005,bass),Connie Kay(1927-1994,drums)。MJQの初期はミルト・ジャクソン・カルテットとしてレイ・ブラウンをベース、アル・ジョーンズをド…

ひな祭り日記・3月3日日曜・晴れ

ぼくは祭事の習慣のまったくない家庭に育ったので鎧兜もひな人形も鯉のぼりも無縁だった。近所に神社があったから七五三のお参りはした覚えがあるが、小学校入学祝いの延長で正装して記念写真を撮りに行った程度でしかない。ただしぼくの年代は最後のベビー…

(44a)モダン・ジャズ・カルテット

The Modern Jazz Quartet:John Lewis(1920-2001,ldr,p),Milt Jackson(1923-1999,vibraphone),Percy Heath(1923-2005,bass),Connie Kay(1927-1994,drums)。ついにザ・モダン・ジャズ・カルテット(通称MJQ)の番がやってきた。デイヴ・ブルーベック・カルテ…

芭蕉忍者説について

芭蕉といえば伊賀出身、伊賀といえば忍者の里ですからね。実際芭蕉没後から芭蕉隠密説もあります。23歳で京都に出奔し、その後江戸を拠点に全国を吟遊したのは俳句師範を装ったスパイ活動なのではないか、というものです。実際当時は藩を越えて活動するのは…

(43h)デイヴ・ブルーベック(p)

Dave Brubeck(1920-2012,p)。 これらの魅惑的なジャケットはジャズがポピュラー音楽として最後の輝きを放った時代を象徴する。ブルーベックもデスモントも個別の音楽活動は晩年まで継続し、デスモント逝去の前年76年には「カルテット25周年記念コンサート」…

荒廃した人びと・後編(連作24)

(連作「ファミリー・アフェア」その24) 二度目は近所の花見の時だった。用水路沿いに桜並木があり、町の名所になっていた。ごったがえす花見客をかき分けて三輪バイクが疾走してきた。長女と次女を挟んでのんびり歩いていたぼくと妻は娘たちを引っ張り慌てて…

(43g)デイヴ・ブルーベック(p)

Dave Brubeck(1920-2012,p)。 ここから後はジャズ界一のスター・バンドの名声をほしいままに人気の頂点を極めるまでのブルーベック・カルテットになる。何度も引き合いに出すモダン・ジャズ・カルテットは白人の雄たるブルーベック・カルテットに対する黒人…