人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

アメリカ喜劇映画の起源(6)

前回に続き今回もコズミック出版の廉価盤DVD-BOX、『爆笑コメディ劇場』の収録作品解説です。チャップリンとキートンが各三枚、ロイドとマルクス兄弟が各二枚で10枚組2000円という破格のボックスです。ジャケットは掲載画像をご覧ください。 チャールズ・チ…

アル中病棟入院記231

(人物名はすべて仮名です) ・5月14日(金)晴れ (前回より続く) 「入院だけで終るつきあいじゃないだろ、おれは佐伯くんに一目も二目も置いているんだぜ、と勝浦くんには相当買いかぶられているが、彼がこれまで出会ったタイプの人間ではないというだけのこと…

偽ムーミン谷のレストラン(44)

・未登場人物 スニフ。ムーミンパパの旧友の冒険仲間ロッドユールとソースユールのあいだに生まれた、ツチブタに似たトロールの少年で、ムーミンの親友。親子二代のつきあいのため、ムーミン家ではスニフの部屋があるほどもてなされている。臆病だが落ちてい…

偽ムーミン谷のレストラン(43)

ムーミン谷にはほど良い川幅の流れが東のおさびし山のふもとに沿って注ぎこんでおり、谷の半ばで流れは南から北へとゆるいL字型の曲線を描き、谷の中央を流れ、北西の大山の裏に回り沖へとつながっているようでした。 ようで、と不確かなのは大山の裏は断崖…

アメリカ喜劇映画の起源(5)

コズミック出版は日本の版権切れ廉価DVDメーカーで書籍扱いで主に書店とネット通販で販売されていますが単品は五百円、ボックスセットは10枚組2000円という廉価盤映画ソフト会社です。画像掲載の『爆笑コメディ劇場』はチャップリンとキートンが各三枚、ロイ…

アル中病棟入院記230

(人名はすべて仮名です) ・5月14日(金)晴れ (前回より続く) 「清水くんにとっては入院は統合失調症の奥さんの看護疲れ(それで鬱になった)からの解放だったのだが、清水くんの入院は残された奥さんの病状を悪化させてしまった、ということだろう。そして退院…

偽ムーミン谷のレストラン(42)

・未登場人物 ミムラ夫人、ミムラやミイら35人の母親。スナフキンの実母。 三人の魔女トロール。 その一、トゥーティッキ。気のいい世話好きな魔女トロール。 その二、モラン。すべてを凍らせる冷たい灰色の魔女トロール。 その三、フィリフヨンカ。きれい好…

偽ムーミン谷のレストラン(41)

第五章。 コイントス! コイン、と言ってもムーミン谷には通貨はないので文献上の知識から考案された偽コインですが、その偽コインはジャコウネズミ博士とヘムル署長の立ち会いのもとヘムレンさんの手のひらに載せられ、スノークが下から叩きあげました。 失…

アメリカ喜劇映画の起源(4)

映画の家庭用ソフト化もビデオテープからDVDになるて急激に商品製作がコストダウンされました。DVDのプレスはテープのようなダビングではなく、CD同様単なるデータ印刷ですから工程やコストも少ない。その上、50年以上経過した作品は著作権保護対象外になっ…

アル中病棟入院記229

(人名はすべて仮名です) ・5月14日(金)晴れ (前回より続く) 「女医の先生の酒害教室の授業は落ち着いた、わかりやすい内容だった。担当医ではないから一度も話したことはないが、冬村さんと滝口さんはこの人が主治医だと話していた憶えがある(注)。勝浦くん…

偽ムーミン谷のレストラン(41)

第五章。 未登場人物・三人の魔女トロール&子だくさんの母トロール(ミムラ夫人)。 ミムラ夫人、ミムラやミイの母親。35人の子を持つムーミン谷一多産な夫人。スナフキンの実の母親。 三人の魔女トロール。 その一、トゥーティッキ。帽子にシマシマの服を着…

アメリカ喜劇映画の起源(3)

喜劇映画の起源はフランスのマックス・ランデで、映画大国イタリアの喜劇王と言えばトトになり、アメリカではサイレント期にはラリー・シモンやハリー・ラングドンがキートンらと同格で、トーキー時代はW.C.フィールズ、ローレル&ハーディがマルクス兄弟に…

アル中病棟入院記228

(人名はすべて仮名です) ・5月14日(金)晴れ 「午前のプログラムはウォーキング。目的地はもみじ公園だが『ゆっくり組』の選択者の方が圧倒的に多いので市民プールまで行って休憩し、戻ってくる。外出時の団体行動を見ていると各人の意外なクセがわかって面白…

偽ムーミン谷のレストラン(41)

第五章。 追加登場人物・三人の魔女トロール&子だくさんの母トロール(ミムラ夫人)。 ミムラ夫人、ミムラやミイの母親。35人の子を持つムーミン谷一多産な夫人。本人同士も知らないスナフキンの実の母親。 三人の魔女トロール。 その一、トゥーティッキ。帽…

アメリカ喜劇映画の起源(2)

初期の映画は無論モノクローム・サイレントで、トーキー映画は1928年、テクニカラーは1938年に実用化されました。60年代末までモノクローム映画も並存したのは三層式テクニカラー・フィルムが高価で撮影技術も困難なのと、60年代末に一層式のイーストマン=…

アル中病棟入院記227

(人名はすべて仮名です) ・5月13日(木)晴れ (前回より続く) 「滝口さんの一通目のメールはすっかり勝浦くんに日にちを合わせて退院するものと決めこんだ文面で、車で迎えに行くから帰りがけ一緒に食事しましょう、と内容は相変わらず、だがようやく決定する…

偽ムーミン谷のレストラン(41)

第五章。 追加登場人物・三人の魔女トロール&子だくさんの母トロール(ミムラ夫人)。 ミムラ夫人、ミムラやミイの母親。35人の子を持つムーミン谷一多産な夫人。本人同士も知らないスナフキンの実の母親。 三人の魔女トロール。 その一、トゥーティッキ。帽…

アメリカ喜劇映画の起源(1)

趣味などどこで決るか判らないもので、中学生の頃に繰り返し熱心に読んでいたのは小林信彦のエッセイ集でした。小説の二大傑作、「大統領の密使」「大統領の晩餐」は何度読んだか数えられないし、長編エッセイ「パパは神様じゃない」と「つむじ曲がりの世界…

アル中病棟入院記226

(人名はすべて仮名です) ・5月13日(木)晴れ (前回より続く) 「昼食前の空き時間に、尾崎さんから今、外来ロビーに冬村さんが来て勝浦さんと話してるよ、と教えられて、入院中の挨拶くらいはいいかとロビーに降りると冬村さん(外来通院)を囲んで勝浦くん、三…

(再録)吉岡実『聖少女』『桃―或はヴィクトリー』『静物』

吉岡実(1919-1990・東京生れ)は同年輩の鮎川信夫と共に戦後現代詩の2大潮流を創った人で、モダニズムや兵役体験など重なる経歴も多い。だが作品は、これほどかけ離れた詩人はいないと言っていいほどだ。 『聖少女』 吉岡 実 少女こそぼくらの仮想の敵だよ! …

(再録)吉岡実『わがアリスへの接近』1974

戦後現代詩の巨匠のひとり・吉岡実(1919-1990・東京生まれ)は作風の実験にも意識的で、およそ生涯に4期の変化があり、そのいずれもが成功している。今回ご紹介する詩篇は1974年発表、大反響を呼び日本での「アリス」(ルイス・キャロル)ブームの火つけ役とな…

(再録)吉岡実『劇のためのト書の試み』1962

今回はすごいのをいく。まずは作品を。どうすごいかは、読んでみればわかる。この詩人にとってはこれがアヴェレージ作というのも念頭におかれたい。作者にとっては特に力作でも何でもないのだ。 『劇のためのト書の試み』 それまでは普通のサイズ ある日ある…

(再録)鮎川信夫『白痴』1951

鮎川信夫(1920-1986・東京生れ)にはあまり話題にされないが好ましい佳篇がいくつもある。「荒地」同人編「荒地詩集一九五一年版」収録の鮎川詩集は『死んだ男』『アメリカ』『白痴』『繋船ホテルの朝の歌』『橋上の人』の5篇。このなかで『白痴』は力作4篇に…

(再録)鮎川信夫『Who I Am 』1976

戦後現代詩を代表する詩人・鮎川信夫(1920-1986・東京生れ)の作品は、先に『繋船ホテルの朝の歌』1949をご紹介した。今回は1977年の「現代詩手帖」新春号の巻頭を飾りセンセーショナルな話題を呼んだ異色作を取り上げる。 『Who I Am』 まず男だ これは間違…

(再録)鮎川信夫『繋船ホテルの朝の歌』1949

今回は戦後日本の現代詩屈指の一篇をご紹介する。鮎川信夫(1920-1986・東京生まれ)は戦前から詩作を始め、除隊後に詩誌「荒地」の中心となった。作風はエリオット、オーデンの影響が強い。 『繋船ホテルの朝の歌』 ひどく降りはじめた雨のなかを おまえはた…

(再録)大手拓次『春の日の女のゆび』1927

身のこなしも女性的で、生涯独身・童貞だったというこの詩人(1887-1934・群馬県生れ)。「幻視とフェティシズムの詩人」と簡略に紹介してもいいが、幻視もフェティシズムもともに定義の難しい性質だ。空想・エロティシズムとは重なりつつ異なる。覗き趣味、小…

(再録)大手拓次の初期詩編

大手拓次(1887-1934)も山村暮鳥(1884-1924)同様専門的な研究が行われているが、郷土詩人・自然詩人の風貌もある暮鳥は各地に詩碑が建立されるほど今日では愛され、あの「いちめんのなのはな」詩碑さえある。それにひきかえグロテスクでエロチックな表現が続…

(再録)大手拓次『そよぐ幻影』1933 ほか

萩原朔太郎は同世代のライヴァルから影響を受けるのが実に巧みで、「月に吠える」では室生犀星・山村暮鳥、「青猫」では大手拓次(1887-1934・群馬県生れ)の顕著な影響が見られる。犀星は大成したが、暮鳥・拓次の知名度はぐっと落ちる。その一因には生前の評…

(再録)山村暮鳥『風景~純銀もざいく』ほか

山村暮鳥(1884-1924)の詩集「聖三稜玻璃」1915(三稜玻璃は「プリズム」のこと)については前に解説した。この詩集最大の悪評は巻頭作『囈語』と、巻末近い次の作品による。 『風景~純銀もざいく』 いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな…

(再録)山村暮鳥の初期詩編

画期的詩集「聖三稜玻璃」1915.12以前に山村暮鳥(1884-1924)は「La Bonne Chanson」1910.8、「三人の処女」1913.5がある。暮鳥のややこしさは創作と刊行順が前後したり、「三人の処女」のように原編集版と改訂編集版があり、島崎藤村序文の後者は改訂前とは…