人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

精神疾患

アル中病棟入院記141

・4月3日(土)晴れ (前回から続く) 「なぜ離れの建物にある第一病棟に移ったはずのSaさんが外来・第二・第三病棟の建物であるこのロビーを通りかかったか一瞬戸惑ったが、ひさしぶりですね、元気にやってます?とあいさつを返しながら、案外土曜日に外来診察…

アル中病棟入院記140

・4月3日(土)晴れ (前回から続く) 「…とりあえず上田さんと片岡さんへの共通メールはいちばん詳細に書くことにする。内藤先生に直接詳しく書くより、上田さんたち経由で伝わった方がいい。訊ねられても濁したほうがいいこともあり、それには上田さんたちにフ…

アル中病棟入院記139

・4月3日(土)晴れ (前回から続く) 「結局堀口さんには自分の思いよりもあっさりした文面を書き送り、内藤牧師からの二通のメールを読み返す。胸に迫った。教会の近況、明日(4月4日)はイースターで、石井くんが子供たちの引率をして公園で玉子さがしをする予…

アル中病棟入院記138

・4月3日(土)晴れ (前回から続く) 「堀口さんが入院の餞別に貸してくれたのが『エリック・クラプトン自伝』で、これは判型も大きく大部で重いハードカヴァーだったので入院前に読んだ。入院してから堀口さんが貸してくれた真意がわかったのだが、クラプトン…

アル中病棟入院記137

・4月3日(土)晴れ (前回から続く) 「堀口さんは喉頭がんから始まりまず声帯を切除したが、転移の進行は治療より早く全身の至るところでステージ4に達していた。言葉にはならないがうめき声はもれるので、夜毎苦痛に悶えてご家族に嫌がられています、と、筆談…

アル中病棟入院記136

・4月3日(土)晴れ (前回から続く) 「桑原くんとメールやりとりしてもピンサロ行きたいけどお金なくてとか、まあその程度の楽しい話ばかりだし、楽しくはあっても入院中に話したところで不毛なだけではある。彼とは絶対真剣な話題にならないから気持がこじれ…

アル中病棟入院記135

・4月3日(土)晴れ (前回から続く) 「洗濯をするなら帰宅外泊の人が多い土日が空いているはず、と思うとそうでもなく、帰宅外泊する人は自宅で洗濯するか着替えをあつらえてくるし、帰宅外泊しない人は平日も土日も関係ないから特に土日だからといって空いて…

アル中病棟入院記134

・4月3日(土)晴れ (前回から続く) 「この病院はアメニティ一切なしだから洗濯も自前で洗剤を持参してランドリーコーナーのコインランドリーで洗い、日中は屋上へ出入り自由になっているから天日干しにもできるし、一部の女性は乾燥機しか使わなかったりする…

アル中病棟入院記133

・4月3日(土)晴れ (前回から続く) 「週末だから学習プログラムもなく、ラジオ体操と掃除を済ませるとあとはまったくの自由時間で、実にのんびりしたものだ。あいつらがこの病棟に移ってきて至極平穏な空気をかき回していった一週間でもあったが、逆に言えば…

アル中病棟入院記132

・4月3日(土)晴れ (前回から続く) 「でもお照さんは冗談言ってる顔じゃなかった、とKくんが真面目に訴えるからにはそうなのだろうと思うが、Uzさんはあっさりと、お照さんはいつでもああいう顔よ。なるほど女性が女性に向ける観察力は鋭い。言われてみれば冗…

アル中病棟入院記131

・4月3日(土)晴れ 「昼食後、彼にしてはやけに真剣な様子だったし、もともと彼はいつだって真剣なのでそれが笑いを買っている、というだけだ。だが本人にしても相談事か愚痴かの違いくらいはついているだろうから(いくらなんでもそこまで馬鹿ではないくらい…

アル中病棟入院記130

・4月3日(土)晴れ 「入院したのが3月2日だからいつの間にか一か月を経過していたわけだ。だいたい満二か月で学習プログラムは一巡するらしいから、医学や薬学面の授業ももう少しで半分(入院後しばらくは入院生活馴れするまでの休養なので)になるだろう。たぶ…

アル中病棟入院記129

・4月2日(金)雨のち曇り (前回より続く) 「非常ベルばあさんの時も第二病棟(二階)と第三病棟(三階)の行き来が制限されてみんな困る、という事態になったが、これは病院側の体制にも問題がある。夕食前から翌朝までは当直看護婦は第二と第三の兼務になり、基…

アル中病棟入院記128

・4月2日(金)雨のち曇り (前回より続く) 「夕食後の出来事を先に書いたが、午後などは(また昨日みたいなことはないだろうな、昨日の今日だよ、だといいですねと喫煙室でFさんやMさん、煙草は喫わないのに「情報弱者になりたくない」ので入ってくるSmくんと話…

アル中病棟入院記127

・4月2日(金)雨のち曇り (前回より続く) 「そんな具合に昼食は楽しい席になったが、夕食直後にはまた誰もが恐れていたことが起った。実は朝から喫煙室の話題といえばそのことだったのだ。まさか今日は昨日のようなことないよな。ないと思うよ、昨日の今日じ…

アル中病棟入院記126

・4月2日(金)雨のち曇り (前回より続く) 「今までTkさんは女性患者同士で気さくに話していても特に雑談に加わってくることはなかったし、KdさんやUzさんとは親しくなっていたがそれは中年以上の年配ならではの気安さで、いかにも健康で聡明な若奥様然としたT…

アル中病棟入院記125

・4月2日(金)雨のち曇り (前回より続く) 「午後は女性AA(当然女性患者のみ参加)がプログラムだったが、おそらく先方の都合で中止。AAや断酒会の人たちが来院して講演していくのはヴォランティアだからこういうこともあるし、その人たちもアルコール依存症を…

アル中病棟入院記124

・4月1日(木)晴れ (前回から続く) 「一昨日の日記を書いたのは翌日で、昨日の日記も翌日書いて、ようやく4月1日の日記を書いている今は実は4月3日になる。その間どれほど病棟でもめ事が連発したかはなんとか記録しておいたが、なぜ日記がはかどらなかったか…

アル中病棟入院記123

・4月1日(木)晴れ (前回から続く) 「その問題のKwが、ついに第三病棟に強制的に戻されることになった。第三病棟は基本的に閉鎖病棟で、時間帯限定ながら開放病棟である第二病棟とは違う。本人はといえば、相変わらず朝からあちこち目的不明の電話をかけまく…

アル中病棟入院記122

・4月1日(木)晴れ (前回から続く) 「傷ついたよ、おれ、とKくんは言い、それもエイプリル・フールだろ?と冷やかす。早く食事を終えた隣のテーブルのSmくんが下膳から戻って通りかかり、一部始終聞いてましたよ、今日一日は佐伯さんの言うことを信じちゃいけ…

アル中病棟入院記121

・4月1日(木)晴れ (前回から続く) 「結局いつもの掛け合い漫才に着地したのでテーブルもいつもの雰囲気に戻る。さて、食べ始めるかと箸を構えると、唐突にKdさんが顔を上げて、いくつ?高校生ですよ(入院直後Nk画伯に真顔で言われた件)。そうじゃなくてカロ…

アル中病棟入院記120

・4月1日(木)晴れ 「昨日はなにしろ慌ただしく、日記も今朝書いた。新聞広告で見た最近のめぼしい新刊―レヴィ=ストロース『神話論理』(みすず書房)、岩波文庫『ゴンクールの日記』、筑摩書房『マラルメ全集』完(第一回配本が87年12月で、全五巻完結まで23年…

アル中病棟入院記119

・3月31日(水)晴れ (前回から続く) 「Kwが手に提げていたのは病院前のコンビニの袋で、買い物だけではこれほど時間はかかるまい。申し訳程度に終わり近くに帰ってきたのだ。欠席のつもりはなかった、つい買い物が長引いちゃって、と言い訳がきくタイミングな…

アル中病棟入院記118

・3月31日(水)晴れ (前回から続く) 「Kwなら全体会欠席を咎められた時の言い訳もだいたい想像がつく。だっておれアルコール入院じゃないでしょ、なんで出なきゃなんないのよ?そして相変わらずの態度をとりつづけるのだ。まともにKwの相手になるのは再入院を…

アル中病棟入院記117

・3月31日(水)晴れ 「採血検査で朝6時半すぎに起こされる。第三病棟のナースステーションにしぶしぶ行く。Nk画伯が終えたところだった。じゃあ佐伯さん、と看護婦に呼ばれ、眠そうね。眠いです。遅くまでマンガなんか読んでるからよ、何回も刺し違えて目を醒…

アル中病棟入院記116

・3月30日(火)曇りのち晴れ 「会話の後Kくんはデイルームに戻って行ったので書きかけの日記を書きつづける。読み返すこともなく他人に見せることもない日記をなぜ書くか、といえば娘たちのために、という他ない。余命10年(そんなに!)という宣告だか予測、ま…

アル中病棟入院記115

・3月30日(火)曇りのち晴れ 「そしてKwがHAに、空気読みなさいよ、ごめんなさいとやりとりしているのにはデイルームの空気が失笑と怒りの入り混じった雰囲気が一瞬、漂った。誰よりも傍若無人な振舞いで病棟中を汚染している張本人が、よくもぬけぬけと、た…

アル中病棟入院記114

・3月30日(火)曇りのち晴れ 「感想を急しておいて、全員なあんだという表情。Uzさんからも譲られ、結局三人分のキウイが小皿の上に盛られる。こんなに酸っぱいキウイならデザートにせず主食の前に食べてしまおう、三人分もあるし、と次々と食べる。なんだか…

アル中病棟入院記113

・3月30日(火)曇りのち晴れ 「彼らがずっと喫煙室を占拠しているのは、煙草を喫いにいくたびに必ずいることでもわかる。一時間でも二時間でもいるのだ。Kくんともどもこりゃなんとかすべきだな、こないだだけじゃ全然懲りなかったわけだ。彼とナースステーシ…

アル中病棟入院記112

・3月30日(火)曇りのち晴れ 「病棟に戻るとKくんが、コンビニに行ったSmちゃんが遅いんだよ、ついでにふりかけ買ってきてって頼んだのに。そんなことを言われても返答しようがない。夕食時間が迫っていて偏食の激しい彼にはふりかけは死活問題だとしても、Sm…