人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧

短歌と俳句(6)石原吉郎5

詩人石原吉郎(1915-1977)の唯一の句集「石原吉郎句集」1974と唯一の歌集「北鎌倉」1978の顕著な相違点は、前者がほとんど62年発表までの句に拠るのに対して、後者が76年からの最晩年の創作からなることだろう。 前回に同時発表された76年の俳句三句と短歌二…

療養日記・11月14日(木)晴れ

副題やリード(呼び込み)で声明している通り、このブログは毎晩深夜零時に1000文字の記事を二本更新している。筆者の就寝時刻は午前二時~三時の間だが、零時からその時間帯までに、多い日で20人~30人のアクセスがある。もちろんもっと少ない日もあるが、普…

短歌と俳句(5)石原吉郎4

詩人として知られた石原吉郎(1915-1977)に句集と歌集が一冊ずつあり、それらかどのような背景を持っていたかは前回で詳述した。発表時期を見ると、第一詩集の刊行に先立ってすでに詩人としての地位を確立していた1958年にソヴィエト抑留時代の句会仲間で結社…

アル中病棟の思い出

忘れた頃に書いているアルコール依存症治療病棟への入院の思い出だが、2010年3月~5月の三か月間だったので三年半も前になる。それでも書こうと思えば新書版で上下巻くらいの分量は楽勝で書ける。入院初日から退院日まで毎日大学ノート数ページ分の日記をつ…

短歌と俳句(4)石原吉郎3

前回・前々回を費やして、石原吉郎(1915-1977)という詩人の生涯と作品についてはイメージしていただけたとしたい。あのように生き、あのような詩を書いた詩人が作った俳句、詠んだ短歌とはいったいどのようなものだろうか。 元々、石原の嗜好は俳句にあった…

続「巴マミの平凡な日常」(ネタバレ注意)

昨日に続いて「巴マミの平凡な日常」あらたまい(芳文社・2013年10月27日刊)の感想文を披露したいと思います。昨夜の記事を掲載した後さらに読み返して、いっそうこの作品をじっくり楽しんだからです。 その前にウンチクを一つ。この手の「引退したフィクショ…

「巴マミの平凡な日常」(ネタバレ注意)

あらたまい「巴マミの平凡な日常」(第1巻・2013年10月27日刊・芳文社)は、初版が出たばかりでたちまち完売となり、まだ再版されないのでネットショップでは一時3000円のプレミアがついた問題作です(本来の定価は700円)。今は重版の予告もされて価格も落ちて…

通院日記・11月11日(月)曇り

先日の通院日記でご報告した通り、筆者は腰痛で痛み止めを服用しながら湿布を貼り、コルセットを着用することになった。痛み止めは薬剤師さんに、 「絶対に空腹時は避けて、食後に飲んでくださいね。一種類は胃腸薬です。痛み止めの薬は胃腸には劇物ですから…

短歌と俳句(3)石原吉郎2

石原吉郎(1915-1977)は帰国翌年に早くも商業誌に作品が登用された。読者投稿欄に応募した処女作がアマチュアのレヴェルではないと評価され(選者は鮎川信夫と谷川俊太郎)、翌月号からは毎月のように新作が依頼されるようになった。第一詩集の刊行は48歳。すで…

CANというバンド

1968年にドイツで結成された特異なバンド・CANは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドと並んで、直接PILやJAPAN、ジョイ・ディヴィジョンをはじめとしたポスト・パンク勢に影響を与えた大きな存在です。また、ドイツ出身のバンドとしてはクラフトワーク、タ…

短歌と俳句(2)石原吉郎1

石原吉郎(1915-1977)は現代詩の世界で、著名詩人としては本物の狂気を感じさせる唯一の存在とも言える人だった。その作品の不吉さゆえか、生前の名声から一転して没後は急速に過去へ封じられた人でもある。真に「呪われた詩人」の風格を獲得するにはこの人ほ…

療養日記・11月9日(土)曇り

朝起きると、腰痛がやはりつらいので、これから一番近い整形(メンタルや内科と同じビル)に行くところです。五年前にはここは通院の必要なし、と痛み止めの処方しかくれなかったので、やや遠い整形外科まで通っていました。入院してブランクができたら行くの…

短歌と俳句(1)寺山修司

筆者は、だいたい日本人にとっての言語感覚は短歌型と俳句型に分けられるのではないか、という疑問を長年抱いている。伊藤整(1905-1969)の「裁判」1952はロレンス「チャタレー夫人の恋人」の翻訳書が猥褻出版物として告訴された事件の、敗訴までの興味のつき…

療養日記・11月8日(金)晴れ

毎週金曜日は訪問看護のアベさんが来る日です。今日は朝から天候が良かったのと、昨夜届いて使い始めた電気敷毛布のおかげで腰の具合も良いので、布団干しやシーツ洗い、床の掃除機かけをしました。掃除機など中腰にならなければ扱えませんから、いかに今日…

もしもロックを贈るなら

もしも贈り物をロックのCDにするなら、どなたも大抵はお持ちでないようなものを選び、英米ロックのビッグ・ネーム(ビートルズ、ストーンズ、ビーチ・ボーイズ、ディラン、ツェッペリン、パープル等)は省くことにします。ブリティッシュ・ビート系のバンドは…

フランス映画の思い出

ぼくは大学生時代年間300本~400本の映画を観ていた。貧乏大学生の身でこれだけの数の映画を観られたのは、シネクラブの自主上映は入場料が安かったからだ。日仏学院やアテネ・フランセ文化センターは皆勤賞だった。近代美術館フィルムセンターも特集上映が…

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド雑感(後編)

当時のアメリカのロック・シーンを見るとビート・グループやフォーク・ロックからガレージ・パンクやサイケデリック・ロックへの移行期で、面白いことにテキサスでガレージ・サイケの萌芽があり、サンフランシスコのバンドはユートピア志向のヒッピーだが、…

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド雑感(前編)

懇意な方からルー・リードの遺作になったメタリカとの共作アルバム「LULU」2011(画像1)を聴かせていただくことができ、本格的なスタジオ作としては「ザ・レイヴン」2003以来のまともなアルバムだったので気持良かった。内容は完全にルーさん寄りの音楽なのだ…

精神障害者としての作文

ぼくは国家公認(!)の精神障害者で、精神錯乱による昏迷や幻覚・幻聴を明確に体験したのは入獄中だったから、それが一過性の監禁性障害でないならばぼくが本格的に発症したのは獄中ということになる。友人のクワバラくんと一緒だ。彼は統合失調症だが、壁や…

療養日記(私信より)・11月5日(火)晴れ

お知らせいただいていたもの、届きました。ありがとうございます。「LULU」と「カラフル」いただいていいんですか?どちらもこれから聴きますが、「カラフル」は映画の迫力に飲まれちゃって全然憶えていないなあ(笑)。「LULU」は20世紀の現代音楽オペラの古…

追悼ルー・リード(後編)

前回の話題が途中なのでニコさんの話の続きから始めよう。とにかくぼくはニコさんの初来日公演を観て、渋谷ライヴ・インには毎月三回(パンタ、P-Modelとブルートニック&ザ・ガーデンが月一で出演していた)通っていたが、ニコの時だけは明らかに会場の空気が…

続・俳句第二芸術論

桑原武夫が「作者名を伏せれば専門家の作品か素人の作品かも、その優劣もつかない」とした専門家10句と素人作品5句を再び引用する。●は専門家の句、○は素人作品と最初からバラしておく。 ○芽ぐむかと大きな幹を撫でながら(阿波野青畝) ●初蝶の吾を廻りていづ…

追悼ルー・リード(中編)

ぼくの別れた妻はCDは最新作とベスト盤で済ませるが独身時代は毎月のように来日ロック・ミュージシャンのコンサートに行っていて(国内アーティストだと毎週)、ミック・ジャガーを筆頭にエルヴィス・コステロ、スティング、ポール・ウェラーが印象強かったそ…

俳句第二芸術論クイズ

フランス文学者の桑原武夫(1904-1988)が戦後間もないうちに発表した現代俳句批判『第二芸術』(岩波書店「世界」昭和21年11月)は当時爆発的な反響を引き起こし、俳句の世界にとどまらず短歌・現代詩にまで影響を及ぼした。これは日本の詩の保守性とマナリズム…

追悼ルー・リード(前編)

まずは昨日の日記記事に加筆(というか、長くなりすぎて削った部分を復元)して再掲載しよう。イントロダクションとしては書き直しても同じ内容になるからだ。 「ルー・リード(1942.3.2-2013)の訃報を今日、知った。10月27日にNYで死去。訪問者の方のブログを…

療養日記または「金輪際」・11月2日(土)曇り

なんだか、キティちゃんのちゃぶ台にピントが合ってしまったが、今朝になり昨日の採血箇所の絆創膏をはがしてみたらこんなに内出血がひどかった。打つ人たちがバレないように隠れたところに打つ理由がよーくわかった。こんな具合に跡が残るなら、内出血の痕…

ネタバレ注意!「魔法少女まどか 叛逆の物語」雑感

以前書いた通り、「魔法少女まどか☆マギカ」のテレビ放映中はぼくは病状の悪化で入院していました。それに深夜帯アニメに対する偏見もありました。多少は気になるところもあるけれど、深夜帯アニメにもぼくでも楽しめる作品があるんだと思ったのは「ちょびっ…

通院日記・11月1日(金)晴れ

これは内科で血液検査のために採血された跡だから、やばい画像でも何でもないことを強調しておきたい。なんでこんなことを断るかというと、一時期このブログには過食だのリスカとかODを話題にしあう人たちがよく立ち寄ってくださり、過食はわかるがリスカやO…

「劇場版・魔法少女まどか☆マギカ」パンフレット

今回はネタバレなしですので、ご安心を。 ぼくは買えなかったのですが、親しい方のご好意により「劇場版・魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語」のパンフレットを譲っていただきました。ぼくの鑑賞初日感、その翌日の感想はすでにこのブログに掲載しましたが、…

アガサ・クリスティーの隠れた傑作(後)

アガサ・クリスティーの素晴らしさは、小説が上手いところだ。作家なら当然だろうと思うとさにあらず、推理小説専業作家はおおむね小説は下手で、イギリスではクリスティー(1920年デビュー)、アメリカではヴァン・ダイン(1926年デビュー)によってようやく長…